まだ暑い
午前、ふみとCDを返しに行って、帰りに駅のところでお蕎麦を食べたいとふみは言う。
まだ少し早いから、蕎麦屋は空いてた。
「ねばねばそば?あははは」
ふみは、いつものようにせいろにしたが、わたしが頼んだメニューをおもしろく感じたらしく、笑ってた。
「でもね、ナメクジってね、ちょーかわいそうだよ、塩をかけると溶けてしまうんだよ」。
うん。でもなんでナメクジの話しになるわけ?ねばねば繋がり?
「ふみのわさび、もらうね」わたしは、からしやわさびが好き。
「全部もらっていいよ。でもママ、涙でるよ」
「いいのよ〜、オトナは、わさびでも食べないと泣くチャンスもないから」
「ふ〜ん、そうなんだ、でもね」ふみは何かを考えてるようで、「でもね、玉ねぎを切ると涙もでるよ」。
何かいいことを言い出すかなと思ったら。
やっぱり子供には物理的な涙しか、わからないでしょうね。
午後、ふみ、自分で大きいリュックをしょって、ウキウキという感じで暑い中ジムまで歩いてくれました。
着替えして、プールに入るのを待ってる時から、ふみの表情はだんだん硬くなってきて、
「ピンクの帽子一人もいない?」
「いるよ」
「どこ?いない」
「みんなまだ帽子かぶってないから」
「いないよ、いない」
ふみ、泣きそうな顔で、抱っこを求めてきて、わたしのシャツに顔を埋めて、泣きはじめた。
なんでまたこうなるの〜、もうくせになっちゃったかな。
来るまでは楽しみ、泳ぎ始めたら楽しい、けど、着替えして入ろうとする時だけは…。
ふみを抱っこして入口に行ったら、ふみのさっきまでのシクシクは、もう号泣となりました。
先生にふみを渡そうとしたら、ふみ、「いやだいやだ」と号泣して暴れだした。
先生は無理やりふみを抱っこしようとするし、ふみは暴れるし、
わたしはというと、傍に立って固まって見ているだけでした。ほかの保護者の視線を感じながら、けどわたしは動けなかった。
あ〜どれくらいぶりに見る光景なんでしょう。こんなに暴れるふみ、昔、よくあったわ。頭の隅っこにある記憶が蘇ろうとしてる。昔、わたし、本当にたいへんだったね。
ガラス窓のところに来て、プールサイドを覗いてみると、
ふみ、ほかの子供と一緒に並んで座って、やや下を向いてる感じですが、ちゃんと準備体操をやってる。
まもなく、笑顔で先生の指導の元に背泳ぎ、ビート板を掴んで足をばたばた。
一安心。
「じゃ、グアムに行かなくていいのね?パリ島に行かなくていいのね?」
後ろから、お母さんのこの声と子供の泣き声が聞こえて来る。
同じくピンクの帽子の初級の子、プールに入ろうとした時、急にいやだと言い出し、お母さんはさっきからずっと説得してる。
「いやだ、グアムもパリ島も行くの」
「泳げない子はママは連れて行かないもん。行きたいなら今練習してよ、さー、入ろう入ろう、みんなもう始まっちゃってるよ」
いやだ。今日はいや。ここじゃない、違うところがいい。
何を言ってるの!いつもここじゃないの!
…
こういうの長引くと余計に難しくなると思ったらしく、お母さん、無理やりに先生にその子を渡し、暴れて号泣してその子、中へ連れて行った。でも終始プールには入れず、ゾウさんのジョウロを持って、隅っこで水遊びしてた。
一時間後、ふみが出て来た。「僕のジャ〜ンプ、見た?すごいでしょう」と誇らしげに言った。
帰りに、暑さの中、セミを探し続けるふみ。
蚊にいっぱい刺されたよ!
パキスタンなんとか、というお花。