ほしいもの

「メダカはないかな?」ふみは道端の水溜まりを見かけるたびに、走って見に行く。




今日は大奥様のお見舞いへ。
駅からの道は、ふみは覚えてました。「もう渡ったほうがいいよ、病院はそっち側だから」。

休日のため、病院の入り口は違ってることも、ふみも教えてくれました。

「大奥様、休んでるのかな」と、エレベーターの中でわたしが言ったら、
「眠くてもなかなか眠れないって言ってたよ」とふみが。

へぇ〜、大人の会話、聞いてるんですね。


カーネーションと、プリンと、今のテレビ小説「おひさま」の本と、小さい目覚まし時計を持って行きました。
「時計の電池、できなかった、ごめんね」ふみは耳が遠くなってる大奥様の耳元で大声で言う。

連休中で、近くのお店はみんなお休み、大奥様に頼まれた腕時計の電池交換はできませんでしたから。


ふみは昨日描いた鯉のぼりの絵も持って行きました。
「ふみちゃんはどれ?おばあちゃんはどれかな?」と、大奥様はふみの描いたたくさんの鯉のぼりをじっくりと見る。


「僕はこれかな」ふみは真ん中の一番大きいの青ののぼりに指さす。「大奥様は…、これ」
「あ、ちゃんと赤ののぼりね、ありがとう」
「だって、この服の同じ色だから」と、ふみは大奥様のピンクっぽい服を少しつまんで揺らす。


その後、ふみは靴を脱いで、靴下も脱いで、ベッドに上がって、くつろぐ。
たまに、「おひさまを見てる?うちは見てるよ」と言葉を発す。


大奥様はプリンが大好きとおっしゃって、一緒に持っていたケーキは、病院の制限があるから食べられないから、ふみちゃん食べて、と。
それを聞いてふみは大喜び、クルリっと起き上がって、ケーキの上の果物をまずペロリ。


満足そうな顔して、やっと思い出したようで、スプーンでケーキのクリームチーズの部分を掬って、大奥様の口元に運び、「あ〜ん」と。
でも自分の食べるスピードでやるので、まるでわんこそばの感覚。


あっという間に12時近くなり、昼食の時間なんです。
ふみは大奥様とさようならする。
「大奥様、なんか欲しいものある?食べたいものある?」とふみが、
大奥様はふみのほっぺを両手で捧げて、「なにもないよ、こうやってふみちゃんは顔時々見せて来てほしいだけ」
「わかった。またプリン買ってくるからね〜」ふみは大声で言う。
「大声で言わないでぇ〜、勝手に物食べちゃダメなのよ病院は、内緒内緒」と大奥様は笑う。


知人がたけのこを送って来た、採りたての。新鮮のうちに茹でて、ふみのリクエストのたけのこご飯を作ります。


明日は、ハイキングに参加します。都内だけど、みな様といろいろ歩きまわることに。


前、買ったお米、もう、二度とないのでしょうね、ここのお米は。

かなしいね。