歯が
Yさんおうちのお庭に咲いてる芍薬を下さったのです。
立てば芍薬
座れば牡丹
歩く姿は百合の花
まあステキ。
夕方のふみ、部屋中ウロウロ、まるで動物園の白熊のよう。
その理由は、下の前歯のもう一本の歯が、ぐらぐらして来たそうだ。
「もう抜ける?今日ご飯食べられない?血でるかな、あ〜早くしてぇ〜」と、ふみはぶつぶつ言いながら、ウロウロ。
「ふみ、おいで」
「なに」
指で、ふみのぐらぐらした歯を触って見たら、「まだだいじょうぶよ、うん、だいじょうぶだいじょうぶ、今日は抜けないわ」
安心したふみは、わたしと一緒に夕食を。
お口をもぐもぐさせながら喋るふみを見て、「あれ?ふみ待って、お口見せて」
「なに?」とふみはゴクンしてから口を開いて見せた。
あー、ふみ、歯が抜けたじゃない、抜けたわよ。
ふみ慌てて指を当て「あっ、本当だ」
「ははは、でも歯は?ふみ、飲み込んだよ、きっと」
「…」
ふみの抜けた二本の歯、ともに行方不明やわ。