かぼちゃ
塾のために、ふみを少し早めにお迎えに行く時、
ふみたちは、ちょうど隣公園に出て走り回るところでした。
わたしを見かけて、ふみは、困った顔をしてました。
「お母さん、午前は誕生会だった為、今、子供たちを外で遊ばせたばかりです、もう少し待ってもいいですか?でないと、ふみ君かわいそうですから」
そう言って先生は、またふみのところに行って、
「ふみ君、ママに、あと20分遊んでいい?ってお願いしてきて、あの時計の長い針が11になったら、遊ぶのやめるからって約束を守ってね」先生は公園の大きい時計を指差して話す。
走って来たふみは、先生の話を復唱して、
「わかった、いいよ」との私の言葉を聞いて、
ふみの目に涙がにじんで来た。
気持ちわからないでもないが、それにしても、ふみはよく泣くね。
本当の泣きもあるし、
「ママ抱っこママ抱っこ」って言って、抱っこしてもらえないと、泣き顔を作って見せるし。
まだまだ甘えん坊なんだ。
ふみは走ってる。笑ってる。転んで、立ち上がってまた走る。
頬っぺた真っ赤、髪はシャワー浴びたかのようにびしょびしょ。
そういうふみをずっと眺めてるわたしのところに、
Mちゃんがよってきた。
ちっちゃいMちゃんは個性的な女の子で、ふみとわりと仲がいい。
「Mちゃん、きれいな歯してるね、まだ抜けてないよね」
「うんん、抜けたよ、下の2つ、また生えてきた」
そうか、みんな早いね。
「ね、ふみ君のママ、今日のおやつはなぁんだ」
「保育園のおやつ?え〜、なんだろう、難しいな。あっ、わかった、当てていいの?」
「うん!」
「本当?じゃ、本当に当たるよ。えっと、カボチャ」
「あっ!ビンポン、すご〜い、なんでわかったの?」
「わかるよ、魔法を使えるんだから」
わかるとも。ふみ君の頬っぺた、耳までカボチャが付いてるんだから。
「すご〜い、じゃ、お昼はなぁんだ」
困ったな、ふみ君の頬っぺたにカボチャしか付いてないや、「魔法一回使うと、疲れてしまうから、ヒントください」
「う…ん、いいよ、か、のつくもの」
「か?か、かぼちゃ!」
「ブッブー、あれはおやつだよ」
そうかそうか、二回もかぼちゃでごまかそうと、魔法使いらしくないな。
「か、お粥!」
「か、じゃないじゃん、お、じゃん」
「か、仮面ライダー」
「食べれないじゃん」
いけない、このままじゃ魔法使いの信用にかかわるわ、「あ〜、やっぱり疲れたね。修行足りない修行足りない。教えて、Mちゃん」
Mちゃんは半信半疑の様子で「カレー」と答えた。
あ〜、かと言ったらまずカレーでしょうに。
それにふみの頬っぺた、あれは、かぼちゃと言うより、
カレーじゃないかしら。
長い針が11になって、ふみは約束通りお部屋に戻った。
タオルを塗らしてふみの顔や髪、砂だらけの腕や、ふくらはぎを拭いて、ロッカーの予備着替えに着替えさせた。
ふみは赤い頬っぺだが、清潔になって、塾に入った。
やれやれ。
夕方、わたしはまた電車に乗ってお出かけ、ふみの上履きを買いに。
汚れて、洗っても明日には乾かないでしょうから、
やっぱり上履きも二足でないとね。
今日の夜空に、久々お月様の顔が見えた。
明日、晴れるかな。