上履き
歯医者に連れてってくれる?とのU君の言葉、
今日もずっと頭によぎる。
昨日、K君のお母さんが止めてくれなかったら、わたしは本気にU君のお母さんに話して、保険証をもらって、
U君を歯医者さんに連れて、ぐらぐらしてるけど抜けない乳歯を抜いていただこうと考えていました。
そうしたらU君、きれいな歯並びで大人になります。
そうしたら今の二重の前歯で誰かから「こわいっ」などと言われなくて済むのですから。
でも、K君のお母さんがとめてくれたのは、ごもっともです。
歯を抜く時、保護者がいないと、万一の場合、責任が取れませんもの。
「自分の子で、もう精一杯なのに、その子はその子のお母さんがいますから」K君のお母さんのこの言葉も、その通りだと思います。
その通りです。
ふみは虫歯がない。ふみの永久歯は歪まずに生えて来てます。ふみは定期的に歯医者さんに行ってフッ素を塗ってもらってます。
その歯医者さんは、いつも缶コーヒーか何かのおまけの小さいおもちゃをくれます。
チョロキューだったり、ヘリコプターだったり、
ふみはその歯医者さんに行くのがとても楽しみです。
U君にもそうなってほしくて。
わたしはただ単純にそう思ってるだけです。
そんなに難しいことではありません。
余計なお世話かしら。
「歯、診るの痛い?抜くの痛い?」とU君が。
「麻酔してくれるから痛くないよ」とK君のお母さんが。「歯医者にまだ一回も行ったことがないかしら、信じられない」
「さあーね〜」苦笑するわたしです。
しかしあの二本の歯を早く抜いたほうがいいと、保育園の先生の方から言わないのかしら。
昔なら、保育園の先生か、学校の先生が言うよ、当たり前です。先生ですもの。
けど、時代が変わりましたってことかな。
今の先生は、家庭範囲内のことに、できるだけ関わらないように、デリケートなことは、できるだけ避けるようにしている気がします。
凶暴化した保護者によるトラブル、学校側や先生たちは、もうこりごりだとよく聞きます。
問題は年々複雑化して、一概に分析と判断ができなくなって来て、
先生たちも、こうならざるを得ないのでしょう。
「先生、どうしてU君は柔道には行くけど、行ったらやらないで、見てるだけなんでしょうか?」わたしは保育園の担当の先生に聞きました。
「それは私たちには分かりかねることなんです。保育園での出来事じゃありませんから」先生は、やや緊張気味。
「いいえ、わたしは先生に個人的にお伺いしたいのです。個人的に先生の意見を聞きたくて」
わたしは諦めません。
「先生は日頃たくさんの子供を見ているので、何かヒントをいただけたらなと思いまして。わたしは素人なので、いくら考えてもわからなくて」
「え〜?あ…」先生は口ごもってしまう。
それから何分間、先生は曖昧な言い方で、遠回り遠回りして、当たり障りのない言葉を、慎重に慎重に選んで、わたしに伝える。
元の内容を再現できないほど、先生は言葉をうまく組み合わせてました。
けど、その主旨はわかりました。
8ヶ月あまり、自分のお母さんが一回も見に来ないということは、子供にとって、複雑なものをいろいろと感じてるはず。それで大人には理解しがたい行動がでる、との内容です。
先生には、お礼を言わなかったのです。
先生はそれを恐れてるからだと感じます。
違う保護者に両舌するような誤解をされたくないからでしょう。
わたしは、U君に関すること、わたしの力の範囲内のことではないと悟りました。
人間は生まれてから、それぞれの定めがあります。
お互い、いい距離を保ちながら付き合っていかないと、
いつか無意味な衝突になるに違いありません。
自分のやるべきことだけを、精一杯やり遂げましょう、と、何回も自分に言い聞かせました。
今日のお迎えはパパです。
なんと、保育園に行ったら、ふみはもう一人男の子と、事務室にいて、園長先生のお説教を受けています。
(`o´)
ふみは、お部屋の中で、あと二人の男の子と、上履きをお互い投げ合い、ふみの上履きは、一人男の子の顔に的中…。
それを聞いてわたしは、ため息つくしかなく、しばらく何にも言えませんでした。
園長先生に叱られたふみは、相変わらずケロっとしています。
「ふみ、もう年長さんでしょう、やっていいこと悪いことを、考えて、判断して、その力を身に付けないと…」
きっと園長先生もこうおっしゃってたでしょう。
けれどこれ以外、わたしには何ができると言うのでしょうか。
(∋_∈)
夕方、時折、激しい雨が降ってきました。