35.1℃

ふみが来年に入ろうとする小学校に、先週連絡をして、ふみを連れて見学する日は、わたしがお休みの今日です。


今日は、朝から日差しが強く、真夏のように暑いです。


わたしは日傘をさして、ふみには帽子を、歩いてその小学校へ向かいます。


上から降り注ぐキラキラ暑い日差し、
下からアスファルトが燃えたんじゃないかと思うほどの熱気が上がって来きます。


これは本当にまだ梅雨も明けてない6月なんでしょうか。


ふみと水を飲みながら、小学校に着きました。




例年もらったトロフィーたち、野球だったり、ソフトボールだったり、



百年近い歴史持つこの小学校に、いろいろと写真が飾ってあって、
こちらは62年前の通知書だそうです。

携帯を取り出して、写真を撮ろうとする時、一人の女の子が急に走ってきて、「なになに?」とカメラのレンズを覗きこもうとする。



このハクチョウは、学校が75周年のお祝いに、その時のPTAが贈った、知床の白鳥のはく製です。

ニ限目が終わって、子供たちは一斉に教室から出て来て、
「あっ」と、わたしに気づいた子は何人もいました。
近所の子か、ふみの保育園の先輩か。

「なにしてるの?」
「見学」
「へぇ〜」


その時ふみは、徐々に徐々に離れて、壁の貼ってるものを見ているように、廊下の隅に、ほぼ壁にくっついて立って、みんなに背中を見せる。


一人男性の先生が来て、「学校見学ですか?明日まで公開中なので、どうぞ、ご自由にご見学ください。私は、1年生の担任です」
それから親切に学校の案内図を紹介してくれて。

「今日は暑いですね。廊下は暑いでしょう、教室にはエアコンが入ってるので、どうぞ、中に入ってみてください」

「ママ、帰る。もう帰ろう」ふみはわたしの手を引っ張る。

元気のいい小学生のお兄さんお姉さんたちに、圧倒されたのでしょうね。
とくに知ってる顔がいると、余計に。
最近、ふみのこういったテレるというか、恥ずかしがるというか、著しくなっている。


このまま帰ったら、ふみはもう小学校にずっと多少の恐怖が残るのでしょう。


「わかった。帰ろう。でも外暑いから、少し冷ましてからね」と、なんとかふみを落ち着かせて、
誰もいない教室に入る。
後ろに貼ってあった絵や書を差してふみに声をかける。
「ふみ見て、これ、R君のじゃない?上手だね。探してみて、知ってる名前、ない?」

ふみはそれを聞いて、近づいて、作品を興味津々に見る。「あ、これ、Kちゃんのだ!」


その時、子供たちが、また一斉に教室に戻って来た。

ふみは慌てて走って出て行った。

さっきの男性の先生が、「授業中でも、中に入ってかまいませんよ」

ふみ、逃げてばかり。先生に苦笑いするわたし。

先生の授業が始まった。

一年生の子供たち、まだ集中力や落ち着きが欠けてる、教室の後ろの方から見ようとすると、必ず誰かが気づき、振り向く、するとつられて何人かの子供も振り向く、ふみまた逃げる。


仕方がないから、ふみと廊下で見物。
ロッカーの上に、たくさんの布人形が置いてあった。子供一人一人が自分をイメージして作ったのでしょうか、そんな感じする。

モルモット2匹も飼ってる。かなり人間に慣れてるみたいで、近寄ったら、モルモットもすぐ鼻をピクピクさせて、こっち側に来る。

誰もいない教室に入って、ふみは黒板にチョークで名前を書いた。

段々調子が出て来て、もう一回授業を見に行こうと言って見たら、応じた。


ふみは黒板に投影するという授業方法に興味を示し、少しずつ近付いて行く。

とうとう座って、先生の授業を聞き入ったふみ。

「駐車場に、6台の車が止まっていて、あと3台駐車しに行ったら、全部で何台になるか」という問題。
ふみ、わたしのところに走ってきて、
「ママ、わかった、わかった」
「シーだよ、シー」
「ぼくわかった」ふみは声をひそめて、「9台、9台だよ」
と言って、ふみまた入口まで行った。


こういう調子で、ふみは楽しそうに見学ができ、
「楽しい、もう一回来たい」と行って、二人は学校をあとにした。

「あ〜、早く小学生になりたいな〜」
よかった〜。ふみは学校が好きで。
「楽しいよ、きっと。保育園よりは、小学校のほうがずっと楽しいよ」


そうかー、保育園を卒業したら、もうわたしはこれで一段落だと、頭のどこかに思っていて(か、そう思いたいのか)、

実際は、まだまだ、むしろこれからだと、今日はその実感が突然身に降りて来て、まるで夢から目覚めたよう。


保育園の時間は、親にとって、子供に取って、一番楽な時間だったんですね。

子供は、遊んで、遊んで、食べて、また遊んで、

親は、子供を保育園に預け、送り迎え以外、安心して自分の仕事をやる。


小学校に入ると、お勉強や、試験など、だんだんリアルになって来る。
その5年後が待ってるのは、さらにたいへんなお受験だ。


わたし、一段落どころか、これからが本番だと気合いを入れないと。


まず体調を整えましょう。体力的に負けたら、何も始まらないから。


そう考えて、長く長く、深呼吸をするわたし。


「学校は楽しいけど、でもぼく、最初はちょっといやだったな。だってみんな、よって来るもん。だから最初は楽しくなかった」ふみはペットボトルの水を飲みながら言う。


「当たり前よ、誰だってそうよ、初めて行く場所だもん。そりゃ緊張するわよ、緊張しないほうが不思議ぐらいよ。なんにもないなんにもない」
「本当?格好悪くない?」
「ぜんぜん。普通よ普通」
「ママお腹すいた」

本当だ。ふみが“普通に”ぐずぐずのおかげで、もうお昼の時間になったわ。


しかし暑いな、体の水分が、このジリジリとした日差しに奪われて、同時に体力も。駅ビルのイタリアンのお店に入って、昼食を。


節電のため、店内のエアコン設定も高めにしてるせいか、扇子を使うお客が多い。


往年の夏には見ない光景だ。お店はいつもちょっと寒いほどにクーラーを効かせていたんだから。


奥の席を案内される。エアコンから遠いわ( ~っ~)/


隣は、20代の女性とそのお母さんらしき女性だった。

テーブルにお料理が盛られたお皿は何個もあって、
中の一枚が、乱雑なピザの耳だった。


ふみはピザが大好きだが、少し前は、その耳は食べない、噛みきれないと言って、いつもお皿に残してた。


その残したピザの耳を、いつもわたしが食べていた。
ピザの耳が好きなのではなく、なんとなくそういう光景を見たくなくて。

今のふみは、もうピザは耳まで全部食べられるようになった。


注文してしばらくして、店員さんがお料理を運んで来て、でもうちのテーブルにではなく、お隣だった。

なんとかグラタンだと。


娘のほうは表情なく、「これ、キャンセルしたはずだけど」

女性店員さんすぐ謝ってグラタンを持って去った。


お母さんは「まー」と言って、
娘は冷ややかな笑みを一瞬浮かばせる。


まもなく、男性の店員さんが来て、手にさっきのグラタンを持つ、「申し訳ないですが、このグラタン、どの時点でキャンセルなさったんですか?」

「え?」娘は面倒くさそうな顔を見せ、「ビールを注文する時、いや、トイレに行く時よ」と言って、お母さんに指をさす。


男性店員は今度お母さんに向いて「えっと、お手洗いに行く時ですね。ちなみにそれは、私におっしゃってたんでしょうか」
お母さんは無言で微笑む。

「そうだよ、あ、な、た、に」と娘が。
「そうですか、それはたいへん失礼いたしました。」と男性店員は去った。
「トイレなんか行ってないのよ」とお母さんはひそかに。

「いいのいいの、冗談じゃないよ、食べれないもん、食べれるか」
「まー」


ふみに今の出来事が、わからないようにと祈るばかりわたしであるが、
ふみ、一心不乱に目の前のピザをかじってる、耳まで、美味しそうに。


親子、席を去る。
「ふみ、椅子」とふみに言ったら、
ふみあわてて降りて、椅子を前に移動して、通路を広くした。
「いいのよ、ありがとうね」とお母さんが、
「いっぱい食べてね」と娘はふみにやさしい笑顔を見せる。




電子掲示板に、いろんな都市の気温を掲載している。

シドニー、10℃〜15℃
南半球今は冬かー。

自然界と同じく、人間世界もいろいろ、ってことね。