鈴虫



柔道は、7月からお休みにしています。
猛暑の中、エアコンのない道場は、ちょっと自信がないから。
9月下旬からかな、再開するのは。去年がそうだった。


今日の午後の水泳は、朝のコースに振替えできました。
夏になると、朝の時間帯はなかなか取れないんですけど。

今日もまあまあ涼しい、せっかく取れたのに、もったいないなあ。


今日は一番の時間帯で、着いたら、まず受付に、水着の忘れものの届けはないかと尋ねる。


ふみ、前回、更衣室で水着を忘れ…。
保育園、塾、スイミングスクール、どこでも忘れ物をするのよ。


そういう届けはないそうで、また新しいの買った。

するとふみが脱いだズボンはこっちのベンチの下に、
シャツは向こうの廊下に、
もう、ほんとうに…。


「ゴーグルは、今日はいい!」
「なんで?潜るでしょう?今日も」
「いいもん、付けなくても」


プールに入ったら、周りのみんなゴーグルを付けてるの見て、ふみはやや不安、でもすぐ笑みを浮かべ、一人の女の子の隣りまで泳いだ。

その女の子、ゴーグル付けてない。仲間なんだ。


保護者席の会話が聞こえてきた。
A:聞いた?砂場のあれ。
B:聞いた聞いた、ね〜、どうしたらいいかね〜
C:なに?ごめん、なんでしたっけ。
A:放射線よ、高いの。
C:あ〜そうそう、あれ、どうなってる?
B:だから、前、計る時は、砂が乾いてる状態で、今回はずっとシートがかかってて、むらしてた状態というか、そうらしいよ。
A:でもどうするんでしょうね。こればかりはどうにもならないね。


話しを聞くと、別の保育園だが、わりとすぐ近くにある。


そういう話を聞くと、へこんでしまいます。


ヘルパー(浮き)付けて泳ぐふみ、男のコーチに、ヘルバーは要らないと要求。
男のコーチに拒否され、
ふみは諦めず今度女のコーチに訴える。
許可された。

男のコーチは「おまえな〜」と笑って、ふみの頭を軽く叩く。



スイミングが終わって、ふみとその足で渋谷へ、駅から15分ほど歩いて、カブトムシと自由に触れ合いができるところへ行く。


カブトムシ、たくさんいた。

オスメス、餌のゼリーを食べていたり、喧嘩をしていたり。
オス同士の喧嘩、角で相手をビューと跳ね飛ばして、「すごいすごい」と、わたしまで思わず喜んでる。


ふみも大喜び。


小学生らしきお兄さんとくっ付いて、「おまえら、喧嘩する場合じゃねぇよ」と一緒に言って。

わたしもその小学生にコツを教えられ、一匹を掴み上げてみた。



帰りに、玄関の虫かごの鈴虫を見て、ふみはほしいと言い出して、
「じゃ、自分で中に入って言ってみれば」とわたしは事務室を指さす。

「すみません〜、鈴虫、ほしいんですけど」

との訳で、5匹頂いた。


わたしなら、虫を飼うことは、まず考えられないでしょう。でもふみが…。


まあ、秋になると、鳴声が楽しみだし。
チンチロリン、チンチロリン

夕方、電話している間、ふみは虫籠の蓋を開け、一匹が逃げた。


もう、ガマンの限界。

そもそも、うちの真ん中に虫籠があって、しかも中に5匹動いてる虫がいること自体、わたしにとって充分ありえないのに。
今、その一匹が行方不明、このうちのどこかに。


我慢できず、号泣するわたし。

ふみがやってきた、ティッシュを渡してくれる。

泣きながらわたしは訴える。
ママは虫が得意じゃない、けどふみのために、飼ってもいいって言った。
疲れてるのに、またお店に虫カゴを買いに、鈴虫に必要と聞いて、腐葉土も買って、重いのに頑張って持って帰った。

なのになんで蓋を開けるの?なんで言ってることを聞かないの?

ふみは左側をしばらく見たら、急に出て行った。
なんだろうと思ったら、ふみはテレビを付けた。
ちょうど大相撲の白鵬日馬富士戦。

さっきふみがちらちらと見る左側は、時計の位置だった。
ずっと時間を計ってたのね。

テレビの音で、日馬富士が勝ったとわかる。
「やったー」とふみの小さな歓声。


ばかばかしくなってきた。なにもかも。


鈴虫一匹、今、うちのどこかにいる。