おめでとう
雨がぱらついたり、急に青空が見えたり、気温はそう高くないが、ムシムシして。
ふみの今日のスイミングスクールは朝のコースに振替して、8時半にうちを出ました。
着いたら、まだ誰も来ていなかった。
これならいい席に座れて、一安心。
湿度で曇ってるガラス越しに、無人のプールを覗くふみ。
今日はテスト。ふみは緊張してるような、緊張してないような。
こっちから見た限り、動きも体力も問題ないと感じるが、それでも、もし進級できなかったら、ふみはガッカリだろうなってちょっと心配。
テスト終わり、出て来たふみは、小さいワッペンを高く持ち上げ、
「ママ、14級、14級になった。合格!」と。
おめでとう。よくがんばったね。
「パパが聞いたら、びっくりするかな」
「メールするね」
「うん」
パパからの返事は、一番いい誕生日プレゼントだと。
それを聞いたふみは、嬉しそうな、照れくさそうな笑顔だった。
「ママ、今日はパパの誕生日だから、夕飯、外で食べよう」
「お」
「パパに言わないでね、びっくりするかな」
お店はパパと決めたんだけどね。
ふみのどうでもいいことにでも、パパは一々リアルに驚きを見せ、喜んでくれるから、ふみはとにかく何でもまずパパに見せたい。
「うん、何がいいかな、えっと、僕が食べたいのは…」
おいおい、誕生日だったのは、ふみじゃないよ。
あ、緑のカーテンのゴーヤを発見。
見事だね。おいしいし、節電にも貢献して。
こちらは、向日葵でしょうね。
下の方に小さいカード。そこに、これは何の植物でしょうか、とクイズをだしてる。向日葵だとわかっても、誰に答えればいい?
植物を見て思い出して、この前、鈴虫たちのために腐葉土を買って、そのまもなく、栃木の腐葉土に高濃度の放射線が検出された、と。
わたしが買った土は、飼育ケースに入れ、すぐ袋を捨てたので、栃木のものなのかどうかは。
そう思ってふみとそのお店に入って見たが、腐葉土、すべて無くなってる!回収されたのかしら。やっぱりあの腐葉土、栃木のかしら。
(=_=)
うちに帰って、洗濯物を畳みながら、ふみに、「鈴虫のケース、仕方ないけど、ふみは近寄らないでね」
「放射線があるから?」
「うん。かといって、今その土を全部変えるもできないよ。取り出したりするのは、もっと飛び散るんじゃない。本当に嫌だな、放射線」
「僕のせいね。僕がその土を選ぶと言ったから」
たしかに土を買う時、ふみが乾いてる土より、湿っぽい腐葉土のほうがいいと提案したから。
ふみは腐葉土という言葉は知らない、腐葉土を見て、指さして、「この堆肥のほうがいいよ」と。
以前、北の丸公園で、堆肥をいっぱい見て、覚えたって。
「ふみのせいじゃないよ。ふみは悪くない。放射線はどうしようもない悪いの」
「ママ、放射線と、神様と、どっちが強い?」
「えっ?、それは…、放射線かな。う…ん、というか、放射線を征服できる神様は、まだ生まれてないみたいよ」
「そう?ママ、…、あのね、実は、その神様、僕だよ」
!?(^◇^)
「え゛?!そーか〜、ふみ、ふみだよ、きっとそうよ、なるほどね。ふみ、がんばってぇ、一日も早く、放射線をコントロールする神様になってぇ〜」
ママはふみの手をとって、握りしめる。
「うん。えぇ〜〜、でもちょっといやだな」
「なんで?」
「だって、神様になったら、仏像になっちゃうから、そうしたら、動けなくなるし、目を閉じてずっと座らなきゃならないし、いやだな、僕」
「だいじょうぶだいじょうぶ、人間みたいに生きてるけど、けど実は神様だというのは、いるんだよ」
「そう?どうしようかな」
神様は仏像にならないこともよくわかってないふみは、放射線という怪獣を征服するウルトラマンになることを頭に描いてるに違いない。
なんだかちょっと感動したわたしです。
「ママ、タオルを畳むの上手だね」
「ありがとう」タオルぐらい上手に畳むと褒められても。
「ふみ、もうお相撲やらないの?」休んでるふみに言ったら、
「ぼく?、僕はもう引退したんだから」
あらま、ほんとうに神様になる気でいるのかしら。
夕飯は新宿に行って食べて、ザーッと雨が降って来る前に、うちに帰ってきた。
ふみと買ってきた「パパ、いつもありがとう」のケーキは、お腹がいっぱいだから、明日朝に食べることに。
わたしはケーキの中で、やっぱりイチゴのショートケーキが一番好き、幸いパパもふみも同じく、よかったです。
パパも、ふみも、おめでとうございます。