蝉時雨


板の間に
へたへた寝るや
蝉の声
  −−鳳朗

蝉の声で、季節は移ろい、秋はもうすぐ。



今朝、ふみを保育園に入れて、出て来てしばらく歩いたら、道端に、この雀のヒナが見えました。

お母さんとはぐれたみたいで、翼は、ばたばたさせますが、まだ飛べないのです。

近くには、カラスもいるから、食べられるんじゃないかな。

掴まえて、育てて、飛べるようになったら放して…、そう考えてわたしは、しゃがんで、手を伸ばした時、後ろからダダダダの足音が聞こえて来て、振り向いたら、近所の玩具屋の女性なんです。

会う時、彼女はほとんど小走りしている。大きい帽子をかぶって、両手にいつも大きい手提げを何個か持って。

「よくいるよ」女性小走りを早歩きにして、「お母さんは近くいると思う、迷子になっちゃったね。お母さんが先に見つかるか、カラスが先かね。でも人間はダメよ、自然のものだから。人間やっても死ぬだけだよ」早歩きはまた小走りになって、去りました。

そうか。
お母さんのほうが先にヒナを見つけますようにと祈るばかり。


今日も屋上に、空と雲を見に。

太陽が出たり、隠れたりして、風は幾分涼しい。


夕方、青空を見上げながら、塾へふみをお迎えに。


携帯の雀のヒナの写真を見せたら、
「お母さんが先に赤ちゃんを見つけるよね」とふみは何回も言った。
うん、当り前よ。カラスは、ゴミを食べてりゃいいのよ。


ふみのおじから、「ウルトラQ」がいっぱい録画されたブルーレイ・ディスクが届いて、ふみはもう大興奮。
さっそくパパと一緒に観る。

白黒の昔の作品だから、怪獣が滑稽で、どうしても笑ってしまうわたしに、ふみは厳しい目線を送る。

けど、やっぱりおかしいもん。また笑いだしたら、
「静かにしてください!」「静かにすれば!」ふみの言葉もどんどん厳しく。


ふみ、真剣に観ている、緊張気味で、怖がってる。
両手は、指の先っぽをピンと真っすぐ伸ばして膝に置くふみを見ると、笑うのは失礼だとわかった。



「ぼくね」寝る前のふみが「つくし組にお手伝いに行くよ、いつも」
つくし組というのは2歳児の組なんだ。

「へぇ〜、どういうお手伝い?」

「赤ちゃんたちのお布団を畳んであげるの」
「ふみが?えらいね」
「うん」
「赤ちゃんと喋ったりする?」
「しない。だって、寝てる子もいるから。ぼくたちは黙ってお布団を畳むだけ」
「ぼくたち?みんな順番で行ってるんだね」
「ううん、ぼくと、Sちゃんと、あとは時々Hちゃんが一番行ってる」
「へぇ〜、ふみはやさしいね」
「ぼくは昼寝しないからだけよ」

ぼくはえらくなんかない、ただ昼寝しないからだけ。わー、かっこいい〜