花火
ベランダの朝顔、つぼみの大きさも数も、結構なものです。
(^ー^)
秋を告げるお花とされてる朝顔、咲くのは明後日の立秋の日なのかしら。
秋の季語にもなっている朝顔は、ほんとうに暦通りに咲いてくれるなら、感心してしまいますわ。
今日のスイミングも、うまく朝一番のを振り替えができて、ちょっと慌ただしい朝ではありますが、電車に乗って、一駅で降りて、まだ人の少ない坂道を下り、スイミングスクールに向かうその時間は、実に気分よい一時なんです。
もくもくとする雲を見て、
「曇ってるね。空も節電してるね」とふみが。
(+o+)
暗いだと“節電”、強さを表す時は“百ミリシーベルト”、時代感溢れ。苦笑いしかないわたし。
秋が目の前にしてる蝉たちは、鳴いて鳴いて、儚い命を惜しむような、楽しむような。
蝉時雨という言葉をふみに教えました。
「ママ、やっぱり朝のコースがいい。あ、蝉!こっちも!ぼく、捕まえて来る、あ、飛んだ!」
進級できたふみは、本来の午後のコースに出て、14級のワッペンを担任の先生に見せたいと言っていましたが、でも今日は朝に振り替えしたのは、お天気が暑いからだけではなく、日本脳炎1期の追加分の予防接種をさせるためでもあります。
いつも行ってる小児科は、土曜日は12時までやっています。
予防接種してから、すぐにはスイミングはできないですから。
ふみには、予防接種のことは言っていないんです。
大きくなってから、ふみは注射を怖がるようになりました。
だんだん記憶ができて、予防接種というのは痛いんだと覚えるようになって、小さい時より、説得するのに時間がかかります。
スイミングスクールに着いて、好きな席に座れて。
しばらくしたら、他の生徒さんとその保護者がぞろぞろ来はじめます。
プールサイドで並んで歩く子供たちは、ガラス張りの前を通る時、みんな自分のお母さんやお父さん、か、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに手を振ったり、笑顔を見せたりするが、
わがふみだけ、
ガラス越しでお母さんがいるの確認さえできれば、ほとんど無表情で素通りするのです。
今日は珍しく、ふみは立ち止まってわたしを探してる、なんだろうと思ったら、ヘルパーが一個だけだよと、アピールしてるのでした。
ほとんどの子は二個付けてました。
手を軽く振ったら、ふみはみんなと一緒にプールサイドに座りました。
息を止めて、水に入るという練習は、元の場所でやることですが、
ふみだけ、水に入った途端、潜って泳いで行く。
先生が手拍子を取りながら数を数え、いいよと大きい声で言うと、みんな水面に出る時、ふみだけ、まったく関係のない場所から出てきて、笑って。そして、先生に注意されて。
泳げないわたしから見れば、ふみはまるで魚のようで、羨ましいわ。
こうして、ふみは今日も楽しく泳ぎ、帰り道にも、蝉しぐれの中、蝉をさがす。
ふみに予防接種のことを打ち明ける。
「えぇぇぇ〜」案の定ふみは難色を示す。
打たないと脳炎になったらたいへんよと説得して、
「認知症になるの?」とふみが。
はっ?どこから聞いた言葉、ちょっとびっくり。
小児科の近くになったら、ふみはお腹すいたと訴え、ちょっと早いが、ファミリーレストランに入って昼食を。
「ねママ、日馬富士は横綱になれる?」「ママ、北闘力は大関だけだった?」「武蔵丸はなんで引退した?そんなにケガも見えないのに」
…
ふみの質問は全部一昔の力士に関するもの。
知ってるかぎりふみに説明して。
「でもふみ、横綱はたいへんな名誉だから、すごいはすごいんだけど、結構つらいと思うよ。圧力とか、普通じゃないんだから。大関は、頑張る目標もあるし、横綱じゃないから、負けるなんてそこまで許されないことでもないでしょうし。けど横綱は、連続負けていたら、もうやめるしかないからね」
ふみは黙って聞いている。
「ふみは、どっちになりたい?」
「う…ん、横綱になって。でもやめない」
ガクッ。
小児科に入ったら、ちょうど空いてた。
ふみは多少モタモタしたが、先生とお喋りしながら、注射を受けた。
「強いね、君は」と先生が。
「バレた?」とふみが。
「バレたバレた。バレバレよ。君はどう見ても強いもん」と先生は笑う。
ふみ、少なくともママよりは強いな。走るのも、食べるのも。
エネルギーを少し分けてって思う時、たくさんあるもの。
今日はパパは出張で関西に一泊。
今晩は近くの花火大会。
パパだったら、ふみを連れて観に行くでしょうけど、わたしはちょっと。
花火が好きじゃないではなく、観るための苦労はしたくないんだ。
混むし、暑いし、そういうのは、わたしの中では、簡単に花火に勝つんだ。
ふみの髪を洗ってあげている時、打ち上げる花火の音が始まった。
ふみは全く気にせず、ウルトラマンのことを熱く語り続ける。
ふと、気付いたみたいで、「花火?うるさいね、いつ終わるの?」と。
よかった〜、いやだいやだ観に行く〜と言い出したらどうしようと思って。
寝る前に、本を読んでと言われ、ふみの好きな本ではなく、ママの好きな本を読む。
「センセイの鞄」
ふみは黙って聞いていた。急にふみは「ママ、なんで日本語も全部読めるの?すごいね」
(よくぞ聞いてくれました)「読んでる途中よ」
ふみは再び黙って聞く。
「…まさか。そんな酔狂なことは、ワタクシいたしません…」
やがて、静かな寝息が聞こえるようになって、ふみは眠った。
花火も、いつの間にか、静かになった。
鈴虫、まだ鳴かないね〜