セイジカ
また暑くなって。蝉は全力で大合唱。
夕顔は散って、朝顔は咲く。
しばらく預かってもらった鈴虫、びっくりするほど大きくなって。
脱皮して、立派な羽根も生えてきて、今にも鳴きそう。
夕方、ふみは久しぶりに塾へ。
その前に、鈴虫を世話してくれた方に、お礼のお土産を。
この訳わからないものは、何かにぶつかると、中はビカビカといろんな色で光るの。
ちょっと面白い。
ふみは緑のを、その方に紫のを。
パパは、夕方、水泳へ。塾からでたふみと、夕飯は何をしよう。
今から帰ってご飯作るの、遅いし、暑いし、疲れたし。
ファミレスに入った。
食べてる途中、雨が降って来て、空も暗い。
「どうしよう。ふみはママの日傘をさしていいよ」
「う…ん、でも、もっといい方法あるよ。タクシー乗ろう」
とんでもない、食べて歩くこともしないのは。
ああだこうだと言ってる時、雨上がって。お店を出たら、ま、水溜りあっちこっち、こんなに降ったんだ。
明日の朝食のパンを買いに、遠回り。お散歩を兼て。
パンを買って、うちへの帰路に回った時、ある建物の前に、テレビ中継車がとまり、報道関係者に見える人たちに囲まれてる。
そういえば、その建物の中に、ある政党の方の事務所が入ってる。
通り過ぎたら、ふみは急に「聞いてくる」と言って、走って戻って、大きいマイクを持って、耳に大きいイヤホンを当てている音声さんの腿をとんとんして、
「何ですか?あの、なにしてるんですか?」と。
今にも待っている対象が出て来るんじゃないかという緊張の構えの中、ふみの言葉に、報道陣から、微かな笑い声が聞こえて、そして何人かが振り向いてちっちゃいふみを見る。
尋ねられたその音声さんは、片方の耳のイヤホンをずらし、前かがみしてふみに何か言った。
「はい、わかった。ママ、政治家、政治家だってぇ〜」ふみはまた走ってきた。
報道陣からまた笑い声が聞こえて、その時、動きがあって、一瞬、ライトの強い光が。
急いでふみを連れて、その場を離れるわたし。
セイジカか〜。まったく興味ないね。もう、選挙も行くことはないでしょう。
東北で、黙々と苦難を耐え、コツコツと自分のやるべきことをやり、被災ながら、またゴミをきちんと分別し、ゴミ袋に名前をちゃんと書いて出す人々、この普通の国民が日本を支えてる、セイジカではないとのことを知る。
セイジカたち毎日、なんだかもう、どこかの三文役者ばかり集まってる劇団のくだらない芝居の繰り返し上演してるとしか。