三歩下がって
天気予報では、東京はもう十日続けて夏日だと。
そうなるんだぁ〜、暑さも寒さも彼岸まで。来週はもう彼岸入りだから、ほんとうに涼しくなってくれればいいんだけど。
明日、祭日なのに、パパが休みを取れて。
それを聞いたふみは、それはそれは大喜び。
「せっかく三人がお休み一緒だから、どこかに出かけようか、ひさしぶりだから。高尾山?筑波山?やっぱり山のほうがちょっと涼しいでしょう」
そう言っても、ふみは全然乗ってこない。
どうしたの?と聞くと、パパと二人でどっかに遊びに行きたい、というのよ。
ふみはいつもこう、パパがお仕事から帰ってくると、もうわたしが喋り掛けるのも嫌がって、パパの時間を全部自分のために使いたい。
「パパ遊ぼう遊ぼう」、ママと遊ぶのつまらないから、もうパパがいる時は、他のことをさせると、時間がもったいなくてもったいなくて。
この前、宿題が終わったらパパと遊ぼうと約束したふみが、わたしがお風呂から出て来た時、涙をぼろぼろと流して、座って泣いてる。
「どうしたのよ」
「だって、パパが、パパが、遊ぶって言ったのに、えんえんえん」
「だから掃除機をかけたらって言ったでしょう」とパパは笑う。
「えんえんえん」ふみはとても悲しそう。
そんなふみ、可愛く見えてたまらなかった。
「えぇ〜〜、じゃ、ママ、明日うちでゆっくり休もうかな」
「そういうの言ってないけど」とふみが。
ぐずぐず、もたもたして、やっとふみは、三人で出かけたいけど、でも、パパと手を繋いでたい、自分が真ん中じゃなくて、パパとだけ。
ママは、パパとふみの邪魔しないで、後ろで歩く。それが希望。
なんか笑ってしまって。わかった、わかったわよ。はいはい、黙って三歩下がって、ついて歩くわよ。
やっぱり笑ってしまったわ。
夕方、じりじりの陽ざしが斜めになって、ふみと新宿へ、日帰りの箱根温泉の手配を、旅行社に行ってしてきた。
ふみは素直に早めに眠ってしまった。
もったいないほどの陽ざしに、大根を干して、これはお味噌汁にすると、もっとコクがあるでしょう。