あと三ヵ所


冷たい雨の一日が終わり、急に暖かい朝を迎えて。

気温の変動が激しいのも、この時期ならではのことでしょう。


今日はふみのインフルエンザの予防接種の二回目ができればと思って。
土曜日は小児科が午前だけ診療、そのため、スイミングを朝一番の時間にした。

暖かくて清々しい陽気、ほんとうに春が戻って来たかと思うほど。


「そうそうそうそう、その調子その調子」背泳ぎするふみに、先生がかけた声が、ガラス越しに聞こえる。


たまに座っているわたしを見るふみは、わざと溺れそうな仕草を作って見せては笑う。

「お隣り、よろしいですか?」
振り向いたら、Mちゃんのお父さんだった。
「あ、ふみ君のお母さんだったか」
Mちゃんのお父さんは笑う。


Mちゃんは、2年ぐらい前に、ふみと一緒に音楽教室に通っていた女の子。お父さんと大の仲良しで、いつも一緒に行動する。
スイミングスクールでは、Mちゃんは土曜日午前のコース。たまに一番の時間帯に振替する時、次の時間帯のMちゃん親子と会う。


今日はMちゃんのお父さんは、わたしをわからなかったみたいで、でないと、決まって結構な力で肩を叩いて来る。「ふみ君のお母さん」と。


人数が多いから声をかけるだけでわからないかもしれないのはわかるが、力を入れて相手を肩を叩くのは、毎回ながらびっくりするのである。


Mちゃんはあまり進級できず、まだ初級のコースのため、練習はちょうどこっちのガラス越しに見えない場所でやっていて、とMちゃんのお父さんは残念そうにおっしゃる。

本当に仲のよい親子ですこと。


ふみの濡れた髪にドライヤーをする時間もなく、小児科へ向かう。


途中のペルシャ絨毯のお店で、中東系の女性が絨毯織りしている。今までなかった。

中東美女はふみを見て、眩しい笑顔を見せ、手を振ってくれて、
ふみも手を振る。

美女って、こういう顔を指すでしょうね。♪絵にも描けない美しさ〜だわ。


小児科に入って、「ふみ君〜」と待合室の一人男の子が嬉しそうに呼ぶ。

H君だ。
ふみより2歳も下だけど、なぜかよくふみの組に来てふみと遊ぶ。一緒にブロックで何かを作ったりして。


お母さんの自転車の後ろに座るH君は、頭を乗り出して、「ふみ君ふみ君」と声掛けながら、すれ違うことが何回もあった。

H君のお母さんは、タレント(女優?)。H君はお母さん似てて大きい目をしてる。


待合室でH君はふみと床に座って遊び始めて、H君のお母さんはわたしとお喋り。「うちは十月中に、もう二回とも受けたのよ」。
近くで見るH君のお母さんは、本当に大きい目をして、凝視されると、ちょっと照れてしまいそうな。
今日は美女日和だね。


予防接種、ふみは一回目と比べて、すんなりでラクだった。


蕎麦屋で昼食をとり、うちに戻って、荷物をおろして、再び出かけ、今度は保育園へ。
年に一回の子供たちの作品展を観に。


昨日の夕方からやってたけど、塾があるから行けなかった。

ふみの時計。


「生き物」とのテーマで、ふみが作ったのは、ちょうちんあんこう。紙粘土で作った。


保育園をあとにして、今度は電車に乗って、乗り換え乗り換え、泉岳寺駅に着いた。

前に、三十三観音でのお参りで、ここのお札所は、二箇所行ったが、どちらもご朱印がもらえなかった。不在だったのと、ご法事のためだった。


事前に電話して問い合わせすればよいのだが、ま、いいっか。もしまたもらえないなら、それはそれでいいよ。「三蔵法師たちインドにお経をもらいに行くのさえ八十一の難を乗り越えなきゃならないのだから」とわたしはふみを説得しようとする。
「でも今日はもらえるんじゃない?そんな感じするよ」とふみが。


一軒目、前回同様にさびれた感じなお寺だが、前回と違うのは、蚊がいないこと。だいぶラクだ。でないと、山門ぎりぎりまでの墓地から通りぬけて本堂に着いたとき、二人とも数カ所刺されたのであった。


何か貼り紙があった。御用の方は、裏の仮設住宅へ、と。
さらに細いぎりぎりの墓地の間の道を歩き、裏の仮設の建物に着いた。

「ごめんください」
「はい」と出て来たのは、かなりのお歳のご住職だった。

これで前回のご不在(か。聞こえなかったのか)も不思議ではないと思った。


その場で、ご住職はご朱印を書いて下さった。

ちゃんと筆で墨をつけてお書きになるが、墨をつけるほうをあまり見ていらっしゃらないため、筆の行く先は、硯だったり、そばのタオルだったり。

でも、御達筆ですこと。


来月から、このお寺は全面解体工事に、それからこの敷地に納骨堂を建てるという。

タイミングよかったね。この古く、たしかにちょっとぼろぼろのお寺に、二回も来られて。


それからもう一つ前回ご朱印がもらえなかったお寺へ。


Y字路に、どっちに行ったらいいのか迷い、ふみはそのうちの一本を指さして「こっち!」
「そう?じゃこっちに行こうか。でもなんでわかるの?」
「こんなたくさんお寺回ったらね、もう僕ね、お寺のにおいがわかるんだ」
目の前の電柱の番地表示を見ると、においが漂ってくる距離ではない。「におい?お寺って、どんなにおいするの?」
「う…ん、大根おろしのにおいとか、あとお寿司のにおいがする時もあるよ」

ははは、なるほど、なんかわかる、うん、わかる。和式の屋敷、なんとなくそのにおいがする、ほんとう。こんなたくさんのお寺を回って、もちろん本堂はお香のにおいはするが、わたしはふみの言ってることが、よくわかる。


番地を探しながら道を進むと、古墳のある公園があった。


中に入って見ると、縄文時代の古墳の遺跡があった。


貝の塚。




おやおや。


さらに進むと、そのお寺、ほんとうにあった。

お見事!


帰りは五反田駅前で3時のおやつを。
店内、クリスマスソングがずっと流れてた。



今日は一万三千歩あまり歩きました。