閉塞成冬

冬気強まり、人も生き物も万事みな閉じ塞がる頃。
閉塞成冬。大雪が過ぎた今を指す。


暦通り、寒くなり。
昨日のヨガ教室は、背中にカイロを貼ってから入った。
冷たい雨は一晩中降り続き、今朝になって、都内でも雪がちらつくところがあった。


最高気温も一桁で、大地の深いところから、冷え冷えとした気が湧いて来る。

手袋を付けてないと、指の動きも思う通りにならなくて。
東京の12月って、こんなもんかしら。もっと暖かいはずじゃないのかしら。


午前遅く、雨やっと上がり、昼過ぎ、晴れてきて。

青空って、いつ見ても気持ちのいいもんだわ〜


たとえ気温は大して上がって来なくても、ほっとするというか。思わず微笑む自分がいる。


夕方、ふみの塾の教室にお迎えに。

国語と算数は終わって、これから英語、というところだった。

なかなか時間が掴めないや。
仕方なく外で立って待ってる。

鼻先が、どんどん冷たくなって来て、
犬みたい、と一人で笑ってしまう。


寒い。けど、ふみはいつ終わるのはわからないため、こうやって寒い中で待つしかない。


一昨日の柔道で、K君のお母さんからいろいろ聞いて、子どもの進学のことを。

K君はふみと同じ年、来年同じく小学校に入る。

ふみと同じ、K君も公立に。

「小学校に入ってみないと、子どもの勉強能力はどんなもんかわからないから、もしまあまあ大丈夫なら、中学校から私立に入れないと」

K君も今、学習塾に通ってる。
K君のお母さんが言うには、もしお受験するのなら、もう小学校三年生から、学習塾ではなく、受験対応の進学塾に通わせなくちゃならない。


もちろん費用は学習塾よりはるかにかかるし、通う時間も今より断然増える。


「近くに有名な進学塾あるでしょう?老舗よ。いいな、うちの近所にはないですから、地下鉄や電車に乗って通わせてる子いっぱいいるのよ」


ふみは、どうなんだろうね。
K君のお母さんか言うように、小学校に入ってみないとわからない。


今の学習塾では、まあまあだけど。本人は勉強が好きというわけではないけど、
でも続いてる。
毎日、国語・算数・英語の宿題をやって、成績もまあまあいいんじゃないかな。


しかし始まったなぁ〜、小学校、塾、受験…。


30分ぐらい待って、ふみは、やっと出てきた。


「ね、ママ、早く帰ろう、夕飯はイカイクラが食べれるよ、ね、早く」

お休みのパパは今日、デパートで北海道物産展をやっていて、ふみが
大喜びの海鮮弁当を買ってきたという。


坂を走って登ったふみ。

安心して食べられる海産物はどんどん少なくなって。
知人の中に、反原発運動をなさる方が何人もいて、
署名運動、デモ。


先月の都内で行われたデモ、5万人以上の人が参加。新聞社やテレビ局は撮影には来るが、どこも取り上げることしなかった。


絶対的な正義というものは、人間の社会には、いかに難しいことかと、年齢とともに、身にしみてわかる。


利益の前には、正義や真実、勇気や道徳まで、全部薄っぺらなものになってしまう。


福島県浪江町のNさんに、先日、会った。
いつも「金はいっぱい持ってるんだ、暇でしょうがないんだ、なんも困らないんだ」とワハハハと言う彼、
「我々仮設住宅に住んでる避難者、明日はあるのか?誰一人明日が見える人がいないよ。帰れるなんて、あなたは信じる?俺は信じないね、冗談じゃないよ。だから酒に溺れる人いっぱい出てきたよ。俺は飲まない、飲みたいけど、一旦飲み出したらどうなるかわかるから…。俺たちこれから一体どうなるんだ…」


痛々しい。その言葉、その表情、痛々しく感じて、
のどが詰まるよう。


けど、そこからは離れられない、離れたら将来の生活は、もっと保障(補償)がない。


砂を噛むような今の暮らし、Nさんの充血してる目が全てを語ってる。


「アルコールは飲んだらダメ、運転危険ですから。アルコールは」わたしの口から、繰り返し出てきた言葉は、なぜかこれしかなかった。


ふと、Nさんは自殺なんかしないんだろうなって頭を過って。


ないよ、ないでしょう。

祈るわ。全てよくなりますように。


手を合わせれば、あの充血した眼球が、ぼーっと遠くを眺めている。



わたし、反原発の署名を致します。

Nさんのため、
子どもたち将来のため、
微力ながら守りたい、正義のため。