月蝕

明け方、この冬の一番の寒さに、だって。

寒くなると、体中の関節がみんな渋くなり、痛いというか、鈍いというか。


ふみも鼻水が出てる。


そうでしょうね。保育園で外で遊ぶ時、ジャンパー着てないもん。せっかく置きっぱなし用の、中綿のジャンパーを用意したのに。


「外で遊ぶ時ジャンパーを着てね」
「はいはい」決まってふみはこう答えるが。

ムダだとわかっていて、わたしは言わざるを得ない。

「ふみ、強くなりたいなら、自分のことをちゃんと守らないと。それが基本よ」
今日こう言ったら、ふみはわりと聞いてる様子だった。
どうなのか。



宿題前に、漢方藥の「板藍根」をふみに飲ませる。

一気に飲み干して「くさい、にがい」と連呼。

もう大げさなんだから。板藍根は漢方の中で、味は全然いいほうよ。


インターホンが鳴る。聖書の伝道という。
朝早々、忙しい忙しい。



宿題をやりながら、昼食のリクエストをどんどん変更するふみ。
「かならずボナーラを食べる」
ふみは、カルボナーラのことをそう面白く言って、自分から笑い出す。


宿題に集中して〜〜〜


昼食して、片付けして、掃除して、再放送の「坂の上の雲」をふみと観る。


先週、待ちに待ったこのドラマ、わたしは息を殺すように観てました。


さすがNHK、こんな大作を作れる。
いい作品は、二度観ても、少しも厭きない。


ふみもジーって観て、
「ママ、最後は日本勝った?ロシア勝った?」

乃木将軍が出る時、
「ふみ、ママと乃木邸に行ったじゃない、乃木坂の、あの乃木将軍だよ」


乃木邸で、明治天皇大葬の日、乃木夫婦自刃した。


乃木邸を通って、乃木神社まで行ったのだが、どうもふみはピンと来なかった。

「またいつか行こうね」
「行く行く」


観てる途中、スイミングの時間になり、やむを得ず出てきた。


よく晴れてる空だ。悠々とした雲。
携帯を忘れて、写真を撮れないのが残念だ。


スイミングスクールの近くで歩いてたら、
「おっ」と、後ろから女の子が挨拶してきた。


このメガネのDという女の子、実におてんば。
ふみを超えるぐらい。年令はふみと同じか、一個下か。


「おっ」ふみも同じく挨拶。


「ねね、今日もヘルパー(補助の浮き)を蹴っ飛ばそう!」
メガネ後ろの細い目は笑う。

(」゜□゜)」なんという提案。


「俺は、ヘルパー付けてないもん」

「え?あ、そりゃそうだよ、おまえだけ12級だもんな、ギャハハハ」
同時に、結構な勢いでふみの背中に一発叩いてから、
「ギャハハハ」さらに笑う。


こりゃ、比べて、ふみはおとなしく感じるわ。


「妹なの?」ふみは後ろで歩く小さい女の子を見て、Dに聞く、


「いいのいいの、あいつバカだから、ギャハハハ」
同時にふみの背中に一発。やはり結構な響きで。


「D〜〜」さらに後ろから、お母さんらしきの無力な声が聞こえて。



「いいのいいの」Dちゃんは走り出して、ふみも、
今度は二人でギャハハハ。


ふみは更衣室に入って、少し開いてる扉から、水着が上に下に飛んでるように見えた。その更衣室、ふみ以外誰もいないはず。


間もなくふみは出てきて、
「ママ、ちょっと来て」と愛想よく言う。
「なに?」
「いいからちょっと着て」
更衣室に入って、ふみは指差しながら、
「水着を置いたら、なぜか、そこに…」指差した方向を見てみれば、
ロッカーの上に、ふみの水着があった。


ふみを見ると、愛想のいい顔を見せる。
「置いたら?ふみが投げたりしたでしょう?見えたよ」
「しししし」

わたしも、つま立ちして、やっと取れた場所だった。

Dちゃんを思うと、ふみは水着を投げたりしただけで、
ヘルパーを蹴っ飛ばそう、でもないから、いいほうだわ。うん。



今日は10日、亡き父の命日。
お供物のお菓子を買って、夜、三人でお経をあげる。
ふみはとっても積極的。終わったら、お供物のお菓子が食べれるんだから。


今日は満月。満月の今日は、皆既月食