成満
一晩中、オイルヒーターを点けて、それでもちょっと寒かった。
ふみは7:30のヒーロー物語のドラマを見るため、早く起きてしまった。
紙で作った“剣”を振り回し、「突撃!!」と。
はっ?突撃?
これは…
昨日、ふみに録画した「坂の上の雲」を、「ふみ、自分を日本人だと思うのなら、これを見ないとダメよ」と言って見せた。
それぞれのお国の言葉を話す乃木将軍たちの、どんな時にも、表情や姿勢を崩さず、凛とした格好良さをふみに覚えてほしかった。
が、ふみがじーっと見てられる場面は、戦争の時だけだった。
「二〇三高地、突撃〜!」ふみは紙の筒を持って、走り回る。
今日、12月18日は、おさめ観音の日。
ふみと江戸三十三巡りの最後の一箇所は、この日に、と待っていた。
デパートに行って、チーズケーキの「しらら」を買って、お寺の受付に差し入れして、ふみと観音堂に上がった。
昨日に引き続き、よいお天気で。
雲一つのないこの冬の日に、ふみが6歳になる直前に、観音さま巡りが成満。
うれしいうれしい。
こりゃ、観音堂前で記念写真を撮らなくちゃ。
観音堂の前に、男の人が座ってた。
薄汚い格好して、自分の開いた両手を、じーっと見てた。
時々空を見上げて、また手を見つめる。手の甲、手のひら。
お悩みのある方でしょうね。
観音堂で拝みながら、なんとなくその人のことが気になって…。
という訳で、記念写真どころか、集中して拝ことすら…。もちろん感無量の余裕なんぞ、もっと。
ふみとの帰り道に、思わず笑ってしまった。
観音さまのメッセージかもしれないね。浮世は、こんなもんだよって。
体のやまいか、心のやまいかの人がほとんど。これが当たり前の浮世の姿でしょうね。
とにかく、成満、めでたしめでたし。
ふみ、よ〜頑張ったな、えらいわ。
パパが出張先の夕食の写メールを送ってきて。