長岡 雪降り止まぬ

真っ青な空の東京を離れて、上越新幹線に乗って、長〜いトンネルを抜けると、雪の国、新潟に入る。


今日から我が家のお正月休み。長岡の温泉へ。新潟方面は初めて。


長岡駅に降りて、途中通過した水墨画のような雪山はなく、もう普通の町。


宿の車を待ってる間、駅前のお店に入った。

一番目立つ場所は、長靴が売られてる。
そう言えば街中の人達、みんなほとんど長靴姿。


ふみに雪道用の長靴を買った。スニーカーなんて、すぐ濡れてしまうわ。

並びに分厚い靴下もあって、パパに一足、自分にも分厚いストッキングを買った。



寒い。雪はまだ降ってる、風がないから、いくらか助かる。


お店を出て駅に戻ったら、宿の車もう着いてる。運転手さんは雪の中に立って、わたしたちを見た途端すぐわかったようで、会釈をする。


車は町を離れ、山の方へ向かう。

運転手さんはCDをかける。
小さい音量で、男性歌手の歌が断続的に聞こえて来る。
「あなたが居れば、あなたが居れば、陽はまた昇る、この東京砂漠、あなたが居れば、あ…」


東京砂漠か〜。



車のエアコンから、ちょっとタバコの匂いが混ざってる暖かい風に吹きだし、歌がもっと聞こえにくくなってきた。


「なんでこんなに雪が積もるの?」とふみは運転手さんに。

「…、なんでかね、こんなもんですね」と運転手さんの言葉は、終始それだけだった。
「わからないの?」とふみ。

雪は、すごい!


わたしの記憶の中、こんな雪景色、見たことがあるかしら。


足跡のないところは、5、60センチは積もってる。

雪の中の山道、ちょっと怖く感じる。

道と深い谷の区切りは、積もってる雪。


心配してる間に、宿に着いた。

ふみはパパとすぐ温泉入りに行った。


雪って、静かだなぁ〜

小さい頃の冬も、雪の日は静かだった。

全ての騒音を吸い込み、全ての不潔を覆い被せ、あっという間に世界を自分の色で染める。


窓際に座り、一人で満天の雪が舞うのを眺める。


また小さい頃を思い出す。
目で空が降り落ちる一片の雪を捕まえ、その最後の行方を知りたくて、けどいくら追っても、必ず途中で見失ってしまう。



温泉に入ってきた。

半透明な湯は、ぬるぬる、とろっとしてて、まるで化粧水の中に浸っているようで、今までの温泉の中、わたしには一番優しい、いい湯だわ。


お食事もよかった。
新潟の美味しいお魚、一人前一人前小さい釜で炊いてくれた美味しいお米。
女将さんの丁寧なご挨拶。

「あの“こづち”なに?」と、ふみは女将さんが置いていた御盆の上の容器を指差す。


「小槌、よくこの言葉を知ってたね」
女将さんは、小槌の酒器から、地元産のお酒をお猪口に注いでくれた。

口当たりの柔らかい美味しい冷酒。


夜9時、玄関で福引きの籤をやっていて、ふみは三人の券を使って三回やって、

お菓子や飴玉、小さい絵馬が当たった。


がっかりしてるふみに、「くじ引きってそんなもんよ」とパパが。


ふみは、一等の宿泊券が本気で当たると思ったのかしら。


雪、シンシンと降り続いている。明日まで、どれくらい積もるでしょう。
今日は、暦上「小寒」となる。