長い絵
朝のこのびっしりの雲は、すぐ開いて、また一日の青空。
温泉の二日間を除いて、今日からふみはまた宿題を始める。
漢字のおかしいところを見つけ、ふみに、消しゴムで消して、もう一回書くように言ったら、
「えぇぇぇ〜」と、ぐずぐずし始め、とうとう涙を絞り出し、
「でもふみ、仕方ないよ、漢字というのは、ひらがなと違って…」
あれ?聞いてないわ。
ふみは、ちょっとしか滲んできていない涙をこぼさないように目の中に保ち、頭を回しながら、そのわずかな涙を通して、あっちこちを見る。
虫眼鏡効果を発見したみたい。
昨日、並ぶ辛抱が足りなく、諦めて見れなかった「清明上河図」
この「清明上河図」は、父親の大好きな絵だった。
小さい頃「清明上河図」という言葉をよく父から聞いていて、その後、うちでは、この細い長い絵(もちろん複製版)が、特注の枠に入れられて、リビングの壁に沿って、飾られていた。
それを眺めて、「雅だな」と父は言う。
わたしは、それほどこの絵に興味はなかった。壁に飾っているものの、ゆっくり細かく見ようとしていなかった。
昨日、長い列の人々は、ガラスケースの中に展示されている「清明上河図」を見ていた。
隙間から、あの長い茶色の霧がかかってるような絵を覗けて、ちょっと懐かしかった。
Kさんが下さったお花。
「あなたは紫がすきでしょう」と、いつもこの色のお花を。
紫。そうね、でも茶色も、雅だわ。