初雪

夕べから降りだした雨は、明け方にみぞれになって、とうとう雪になり。

都心の初雪となった。


シンシンとした寒さの中、雪はみぞれになったり、雨になったり、また大きい牡丹雪となって降り舞う。

地面には積もらないが、長岡で買ったふみの長靴の活躍する時だ。


傘をさして、午後、保育園へ。懇談会に参加。


欠席は3、4名だけ。やっぱり出るべきだったね。


最後の懇談会なので、内容は主に小学校に入ることについて。

まず先生と園長が話す。

担任の先生は、この一年間の、子供たちの成長振りを、
園長先生はいろんな連絡事項を。


担任のF先生は、運動会や発表会のあと、子供たちの身体能力と心の成長が目立つようになった。と。

いろんな遊び方を開発して、時々驚かされる。

「今日は縄跳び大会やって、金メダルと銀メダルをもらった子がいて、金メダルの子は、2分間以上飛び続けて、120回ぐらいでした。インタビューして、どうしてこんなに上手ですかと聞いたら、いっぱい練習したからです。努力したからです、と、堂々と答えてました」


保護者のほとんどは、小学校入学に関する質問。

「勉強机の必要性は?」

お兄ちゃんやお姉ちゃんのいる子のママたちの経験談では、ほとんど、必要なし、だった。

「結局、物置になる」
「やっぱり親と同じテーブルに座ってお勉強するのが一番」
「場所とるだけ」



「登下校は一人でいいの?」
「勉強はついていけるのか」


S君のパパが、
「うち、長女は8歳、勉強はダメでね、でもうちは勉強はどうでもいいとの方針ですから。僕は全然気にしない。本人は小さい時から、将来漫画家になりたいと言って、本当に毎日絵を描いてる。なら僕的には、もう中卒で充分と思ってた。小学校に入って、娘がすごく落ち込んで、その原因は、はははは、小学校の男の子っていうのは、一番残酷なもんで、人を、まるで定規で測って見てるみたいで、ちょっと違うところがあると、もう…。うちの娘は、“ブス”と言われるわ、“デブ”と言われるわ、女の子、ブスでデブで、もうかわいそうでしょうがないじゃない。今までパパ、ママ言ってるの全部ウソなの?、あたし、こんなにダメなの?って。でも娘は絵を描くの止めなかった。この辺に住んでると、わりと有利で、×××に行けば、絵本画家とか、普通に会えたりして、娘は励まされて、区の絵のコンテストに何回も優勝して、あれから娘はすごく自信がついた。絵にだけじゃなくて、人生にというか。今も男の子にデブブスに言われるけど、本人はケロッとしてる。だから僕から見れば、何か一つ、一つだけでいいから、子供の得意なことを探しだしてあげたら、人生ガラッと変わると思います。それがあるから、多少の打たれなど、平気になる、強く生きることができる…」


はあ――、なるほどね。


沈黙のあと、「うちの子、得意なことはなんだろう、ない気がする」と一人のママが。


みんな笑ってしまって。


塾についてもいろんな話し出て、学校の成績のトップは、みんな入学前から学習塾に通ってる子。
小学校に入ってからお勉強を始める子は、どうやってもトップになれない、だそうだ。

で、進学塾に、やっぱり4、5年生から通わせるつもりの親も多い。

「うち、お兄ちゃんが御茶ノ水の進学塾に通っていて、そうしたら帰りは9時半ぐらいになるから、とてもたいへん…」

ひゃ〜、9時半、それはやってられないや。

駅前に老舗の進学塾があって、ありがたいわ。




懇談会が終り、先生と園長先生が退席し、保護者だけの集まりになり、

T君のママが、謝恩会の提案を。

「毎年の卒園生、必ず謝恩会をやります。このクラスはずっと動きそうにないから、私とK君のママが…」

事前に連絡先が、もうきれいプリントアウトされ、一人ずつに配られ、

「卒園式以外の日に、また謝恩会をやると、皆さまも仕事があるから、時間難しいでしょうし、卒園式のあとに謝恩会をしようと思って…、皆さまご意見ありますか?」


ありません。

「なにかご提案とかは、ありましたら」

ありません。

「なんか、皆さま…、ま、仕方ないですね。では、私が今までの慣例に基づいて提案してもよろしいですか」

お願いします。


謝恩会は、少しの先の中華料理の二階を貸し切り、

先生には、色紙でメッセージを書く。公務員ですから、物をプレゼントできないから。
それで色紙担当はどなたか。


子供たちはお花を一本ずつ先生に渡すこと。
それでお花の手配の担当。
ただごはんを食べるだけじゃないから、ゲームなども考えたほうが。
それでそれを用意する担当。

事前に会場の飾りなどもしなくてはならない。
会場担当。

会計も、

その中華料理屋さんとの打ち合わせ、

などなど。


柔道のK君のお母さんは以前、そういう時、早いうちに積極的に担当を申し込んだほうがいいと言ったことがあって、でないとやる気ないと思われるのよくないのと、結局やらなくちゃいけないから、回って来たことが苦手のだったりすると、もっとたいへん。


そう考えてる中、みなさま、「じゃ、わたし会計を」、「ならわたしは色紙」と言い始めた。
顔を見ていると、心からやりたいより、やっぱりK君のお母さんの忠告を知ってる感じ。みんなK君ママを知らないはずだが。(^◇^)


「じゃ、わたし、お花を」と、私。

「お花ね、わかりました。」T君のママは名簿でしるしをつける。

「あ、じゃ、わたしもお花…」と一人のお母さんが言った途端、「お花は一人で充分だと思います」とT君のママにより即却下。

ひゃ〜危ない危ない。

仕事先に出入りする花屋さんがあるから、そっちに頼んでみよう、うん。


「あの、Hちゃんのママはどうですか?なにを担当します?」とO君のママは問いかける。

「え?わたし?わたしは何でもいいんですけど」
「何でもいいのは困りますけど」

うひゃひゃ、お花って、助かったわん。

懇談会は終了、けど決まってないこともあるようで、まだみんなお部屋か廊下に。

すみません〜、お先に〜

だって、ふみが塾の日なんだもん。この寒さ、あまり遅くなるとね〜


お部屋に行って、ふみを呼ぶ。
F先生が来て、
「あ、ふみ君のママ、さっき私が話した今日の縄跳び大会の金メダルは、ふみ君でしたよ。すごいよ、120回ぐらい、ずっと連続飛べました」
と、F先生の目がうるうるしてきて、ふみの頑張ってる姿を想像しているわたしが、そのうるうるを見て、あわや、もらいそうになった。


F先生、感動しやすいタイプな方なんだね。

さっき懇談会の時も、発言すると共に、顔や眼球がどんどん赤くなってきて。

たいへんね。


それにしても、ふみはすごいね。金メダルもらえたんだ。

「よく練習しますから」とのインタビュー時の言葉、その通り、だってふみは、プールの中は縄跳びの仕草でやるし、
道道場で帯で縄跳びもするもんね。


「パパにもメールして、教えてね」
「するする。ふみこんなに頑張ったもん。でもふみ、なんでふみは、こんな体力あると思う?お菓子やジュースやコーラばかり食べて飲んで、こんな体力があるわけないよ。パパ、ママきちんと一日三食、食べさせて、変なもの、ふみに食べさせないからよ…」

アピール、アピール、食べ物の大切さ、人間の体は食べたものでできた、という概念を、徹底的に叩き込まないと。


カバンを下して、こんど塾へ向かう。

みぞれがちらついて、寒いこと寒いこと。



塾に入れてから、わたしはカフェーに入る。

ホットココアを綴りながら、お花を担当との申し込みは実に賢明な行動だと、嬉しく笑う。

「ふみ君のママはなにを担当するんです?」と聞かれる前だしね、あ〜素晴らしい。

しかし、あの欠席の4人はどういうこと?態度に問題あるんじゃありません?うん。大いにあるわ。へへ。


カフェから出て、みぞれは上がったが、寒さは増して、小走りに塾へ向かう。

「今日はテストだったよ」
「え〜、なんの?」
「算数」
「で、どうだった?」
「もう次の行けそうだって」
「次のは、引き算?」
「わかんない。たぶん」
「で、その肝心なテストの点数は?100点?」
「違う、二つ間違いがあった」
「悔しかったでしょう」
「悔しい?なんで?ぼく嬉しかったよ」
「嬉しい?」
「そうよ、だって僕、二つしか間違えてないもん」

ハッハッハ、えらいプラス思考やな。