アリ
今日は快晴だが、北風が冷たい。
朝起きて、全身が痛い。
それもそのはずだわ。
昨日、ほぼ6時間、わたくしは、一枚の座布団の上に、背筋をピンと伸ばしたまま、正坐して、すごしてました。
芸者体験日って感じ。
正坐は、わりと強いほうだと思います。足も、さほどしびれませんが、6時間は、やはり。
首が痛い、肩が痛い、全身だるい。
けど、さっさと起きないと、昨日のふみの水泳を今日に振替したから。
スイミングスクールに向かう道で、「大相撲、よかった〜、夢だったかな。夢?」
夢じゃないよ、全身痛いもの、ママは。
「あ〜来年も行く、福祉相撲は、おもしろい」
勘弁してよ。6時間の正坐、プラス、ビール瓶を倒すなんぞ、もう二度とごめんだわ。
「来年、パパと行ってね」
スイミングの窓越しの待合室の椅子に、やはり背筋を伸ばして座るわたくし。
そうせざるを得ない、挨拶しなくても、ほとんど顔見知りで、みっともない姿勢は見せられないや。
厳密に言うと、知らない人にも、さらに厳密に言うと、誰もいなくたって、神様が見てるしね。乱れるわけにはまいりません。
小学校高学年の男の子がふざけてる。ふみに向かって、ちょっかいを出す。
ふみは、なんとか対応したり、困った様子だったり。
土曜日、午後の時間帯にも、そういう子がいる。大体、小学生の男の子はそういうもんだろうね。
水泳が終わり、スクールから、バレンタインとのことで、チョコをもらった。
小さいチョコがたくさん入ってる袋をもって、ふみは待ちきれなく開けて食べる。
「ふみ、カラスまた来たよ、ふみを見てる、あ、ハトも」
「なんで、チョコを狙ってるの?」
「そうよ、あ、あの子だわ、また食べてる」
「もう僕は、カラスの世界で有名人?」
ハッハッハッハ
「有名人有名人、前もお菓子をやったしね」
ふみは急に背中を丸くして、早足になる。「違うよ、違う、これはチョコレートじゃないよ。石だよ」
「ガー、変な子だ、石を食べてるんだよ。ふみ、これじゃカラスの世界で、もっと有名になるよ」
「違うよ、違うよ、この石ね、食べて食べて、苦いからね、ちょっと甘くなるんだよ、でも石だよ」
枝に止まるカラスは、冷やかにわたしたちを見降ろしてる。
「ふみ、あの小学生のお兄ちゃん、何年生?」
「どの?」
「青い帽子の」
「4年生だって」
「水の中でふざけると危ないから、今度ふみは我慢しなくて、先生に言ったほうがいいよ」
「…」
「世の中でね、そういう人、絶対いる。どこにでも。人間だけじゃないのよ、動物、虫すらそう。働き者の蟻ってね、10匹がいれば、必ず2、3匹怠けものがいるらしいよ。で、その2匹を取り除いたら、残る8匹の中で、やっぱり2、3匹怠けものが出て来るんだって。そういうもんなの。人間もそうよ、あのお兄ちゃんがいなければ、残った人の中、また同じちょっかい出す人が出て来る。集団って、そういうもんなの。逃げ切れないよ。だからそういう対応のし方を、自分で考え出さなきゃいけないのよ。」
「うん」、パクパクと小さい粒のチョコを食べるふみ。ママの話、わかったのかな。
うちに着いて、本当にくたびれた。
けど、ふみの宿題を見ないと。
ふみはと言うと、元気元気。
午後、どうしても疲れて、ベッドに横になる。
やっと、うとうとになったら、「ママ、ママ」とふみは、わたしを揺らす。
何事?「3時だよ、おやつは?」
(ー_ー)!!
誰かー、わたしを労わって〜
つまらなさそうに、ふみは、持ってるコマに、紐を巻く。
保育園のコマは紐で回すタイプで、ふみは、うまく紐を巻いたコマを投げ出し、上手を回せる。
けど、うちのコマ、タイプが違うのに、言っても聞かず、永遠に黙々と紐を巻くふみ。
ほー、ふみもこういう一面があるんだね。ちょっと安心したわ。
夕飯は、ふみは豚の角煮を食べたいと言うので、圧力鍋で作った。
お大根も入れて、美味しい。
ふみ、止めないと全部食べてしまいそう。
明日から、三日間ほど雨模様だって。
原発、また温度急上昇だそうで、どうなってるのかね。