何歳?
「6年生のコセくん、僕をからかって。もう、大嫌い」
「からかうって、どういうふうに?」
「ぼくの名前を、××××サカースって言った」
「あははは、確かにそんなところあるね」
「あ、今、ママ笑った。ぼく、怒ってるのに」
「あ、失礼しました。で、ふみはどう言った?」
「ぼくは、こせこせこせつって言った。骨折がいっぱい」
「それはうまいね。で?」
「こせくん、僕の顔をこうパーンと叩いた」
「で?」
「ぼくは、こせくんの背中を叩いて…」
(+o+)
「ふみ、そのこせくんって、6年生だっけ?なんでふみは、そういうお兄ちゃんばかりと絡むの?ふみは一年生のお友達といればいいじゃない」
「違うよ、休憩時間、外に出たら、一年生みんな名札を付けてるから、そのこせくんが僕の名札を見て…」
「ふみ、そういうことは、自分が解決しようと思わないで、先生に言って。絶対そのほうがいい。この目のところの痕、これなに?」
「たぶん、こせくんが叩いた時」
「危ないね。今度あったら絶対先生に言って。K先生、言ったよ、どんな些細なことでも、いつでも話して、待ってるよって」
「ママが今度こせくんに怒って」
(いやだよ。小学校6年の男の子、怖いもん)「ママじゃなくて、学校のできことなら、やっぱり担任の先生に相談しないと」
「今度こせくんがかかって来たら、ぼくもうこうやって、こうやって、倒してやる」
「やめてよ。言葉で解決して。暴力で問題は絶対解決できないから。国と国の戦争だって、何も解決できないでしょう。ふみがケガしたらママは嫌だし、相手にケガをさせたら、それはもっとたいへんなことだから」
しかしふみは、なんで高学年の子ばかりかかわるの?この前だって、高学年について、寄り道してからの登校だったし。
「ぼく、こせくん嫌い、なんで学校に、こせくんがいるの?」
「世の中は、そんなもんよ。好きな人もいれば、そうでもない人もいる。大人も一緒よ。思う通りならないことが、ほとんど。むしろ思う通りなったのが意外というか」
「大人も嫌いな人がいるの?」
「いるわよ、あたりまえよ。だからといって、もうかかわらないっていうのもいかないことだし、そういうのたくさんあるよ」
「なんだ、つまらない」
「しょうがないじゃない、人間の世界に生まれたんだから、神様じゃないんだから。つまらないこといっぱいあるのよ」
「…」
「でもふみ、こせくんいたって、ふみは学校が好きでしょう?」
「うん!好き!楽しいもん」
土曜日の朝、目覚ましをかけなかった。目覚めて、また眠って、また目覚めて、もう7時すぎた。
暗くて寒い日の朝は、もっと寝たいけどね。
冷たい風の中、ベランダで洗濯物を干そうという時、
「ママ、髪、だいじょうぶ?なんか、垂れ桜みたい」そう言ってふみは笑いだした。
いけない。適当にしばった髪は、両側いっぱい落ちて来て、本当だ、枝垂れ桜みたいだわ、ふみ、うまいこと言うね。
みだしなみ、たとえ休日の朝にも緩めてはならぬ。
ちゃんと髪をきれいに結ってからでないと。
今週は、ふみが給食当番だった。金曜日に学校から持って帰った白衣を、夕べさっそく洗って。まず汚れたところを念入りに手洗い。
「ふみ、この茶色の、なに?」
「コロッケのソース」
きれいに取れてよかった。
乾いたその白衣に、アイロンかける。
「ママ、なんでアイロンをかけるの?」
「だって、これはふみのじゃないでしょう、学校のでしょう?月曜日に持って行ったら、また次のお当番のお友達が着るでしょう。そうしたらアイロンをかけないと」
シワ一つない白衣を、きれいに畳んで、帽子と一緒に袋に入れて。
「ママ上手だね、お店屋さんみたい」
へっへっへ、そうでしょう。
この服の畳み方、母親から習って、練習して楽しかったのを覚えてる。
連日昼食はタケノコを頂いて。タケノコご飯・タケノコ天ぷら・タケノコ梅和え・タケノコのおつゆ。
タケノコは好き。
けど、胃があまり丈夫でないわたしは、いつもタケノコにやられる。
繊維のせいかしら。
あとは蓮根やごぼう、全部好物だが、食べるのいつも躊躇してしまう。
消化しきれなくて、胃が痛くなったり。
今日のお昼、なにを食べようかな、困ったな。できれば、軟らかいパンだけとか、ヨーグルトとか。
けど、ふみがいるしね。
結局、洗剤などお買い物してから、近くのお蕎麦屋さんで食べた。
「ママは硬いものがダメなら、離乳食はどう?」
吹き出してしまった。よくそう思いつくね。でもふみは至って真剣な顔。
温かいお蕎麦だが、やはり胃に入った途端、違和感が…。タケノコにやられてるね相当。
めずらしくコンビニからプリンを買って帰ることに。
ふみと二人でプリンを食べて、ふみのを味見しようと、わたしが一口食べたら、ふみは泣いた。
味見にしては多いと。だんだん大泣きになって「なんで僕の食べるの?いやだ、いやだ」
あははは、大きく口を開いて泣くふみを見て、わたしは笑った。
かわいいなぁふみ、まだまだ幼いなぁ〜
プリンを食べて、DVDの鑑賞。
これはもう何回も見たけど、とうとう買っちゃって。それでもふみは見ながら何回も「これは買ったよね?もう返さなくていいよね?」と心配そうに。
午後は水泳へ。
寒いわ、今日も。3月上旬の天気みたい。
坂の途中でSちゃんとお父さんに会った。
Sちゃんは、ふみと学校が違うが、学童クラブは一緒。
Sちゃんのお父さんの話しだと、もう学童からは、Sちゃんは一人で帰ることに。
うちは当分、しないと思うわ。ただでさえ高学年の子と寄り道するのに、お迎えがないと、もうどこに行くのやら。
水泳の帰りに、駅でYさんと会った。
わたしがお手洗いに行く間、ちょっとした座れるスペースで、ふみはYさんとお喋り。
Yさんは、少し厳しいお方なので、わたしはハラハラ。
戻って来た時、ふみはまだYさんとお話しをしてる。
「いろいろ習い事していいわね。そうよ、なんでもやってみたほうがいいわよ。やって見ないと、自分はなにが好きなのか、わからないから」
「でも1つだけママがダメっていうのがあるよ」
「あら、なんでしょう」
「自衛隊」
「あははは、それあなた、早すぎるわよ、自衛隊は。今、自衛隊に入って何ができるの?」
「ぼく、コマまわしできるよ」
「あははは」
…
この程度ならセーフだわ、ふみから何か不適切な言葉が出てくる前に、早く帰ろう、という時、
ふみは急に「Yさんは何歳?」と聞きだした。
「何歳に見える?」
「85?」
?!
誰か助けて〜、わたしは固まった。
ふみは、自分が早く大きくなりたいから、年齢の数が多いのは、すごいことだと思ってる、自慢したいことだと思ってる。
それにふみの年齢から見れば、70も80も90も、そんなに区別がつかないから。
70代のYさんにとって、85というのは、微妙にリアルさがあるからか、明らかにちょっと顔色変わって…。
(-_-)冷や汗。
帰り道に、ふみをたっぷりとお説教。
適当に発言するもんじゃない!どうでもいいことを言うより、黙ったほうがよほどいい。体に関することは、話題にしないこと。それは何遍も言ったことでしょう。
年齢は言われてない、とふみは弁解。
年齢も体の範囲内。考えれば分かるでしょう。それに、女性の年齢を聞くのは、紳士のやることじゃない!
「ごめんなさい」ふみは素直にあやまる。「パパに言うの?言わないで。パパにいうでしょう、ね、言う?」と、やたらに聞く。