ねつ
昨日、ふみは久しぶりに発熱した。
午前、宿題をやって、スーパーの朝市に行って、ご飯を食べて、片付けの間、ふみはまた「シコふんじゃった」を見たいと言い出して。
もう数えきれない回数を見てる。そう思って、わたしも飽きずについつい見てしまう、その都度、爆笑してしまう。
今日は、埼玉県立美術館に、気になってるある展覧を見に行こうと思って、約束の時間になって、ふみは行きたくないと言う。「ぼく、芸術、興味ないから」との理由。
今さら、こういうことを言ったって。
「頭が痛いし」とまた別の理由を。
がっかりするわたしは、自分も実は半端じゃなくだるい。ここ何日間、夕方になると、寒気がして、微熱になったり。
疲れたかしら。ちょっと疲れた。
卒園・学童・小学校入学・PTA…。
幼稚園出身の児童の保護者は、年中の行事に慣れてるかもかわからないけど、年に保護者会も一回ぐらいしかない保育園出身の保護者にとっては、ちょっと負担と言えるじゃないかしら。
ふみとぼんやりとDVDを見て、まだ早い、行こうと思えば行ける、…やっぱりやめよう。“芸術”のために苦労することはない。
そのまま、ソファーに横になる。
ふみも隣りのスぺースに、無理やりに横になった。
あれ?この子、やっぱり体調イマイチかな。でないと横になるなんて、まずないでしょう。
テレビが、さらにぼんやりになって、
民謡歌手が「…朝日を拝む人があれど
夕陽を拝む人がいないサノサ…」と歌う。
本当ね、なんでしょうね。夕陽だって美しいのにね。あ、ここで窮屈に寝るじゃなくて、ベッドに行こう。
と思ってる間に、眠ってしまった。
目覚めたら、もう40分も過ぎて。
頑張って起きて、ふみをなんとか起こして。
ふみは起きて、また横になった。
これは怪しい。体温を測ったら、38.6。
念のため自分のも測って、37.5。だから寒気がするんだ。
咳もない、鼻水もない、喉が痛いの訴えもない、風邪じゃないみたい。
体が休みたいとのサインでしょうか。
頑張って二人はベッドに移動。毛布をかけ、ふみに本を読んで、飽きたらお喋り。
「そうだ、ふみ。K君のママに会って、お礼言われたよ。Kはいつもふみ君にお世話かけてますって」
Kとは、体が小さくて、大きいメガネをかけてる男の子。ふみと組が違う。
「そうかな」ふみはちょっと照れる。
「K君とまた一緒に下校してるの?」
「うん。ぼくいつもK君と手を繋いでる。昼ごはん食べたばかりなのに、あ、お腹すいたお腹すいた、うちに帰ったら何か食べ物を探さないとな、って、いつも言うよ。面白いの」
「そう〜」
「K君がね、通った電車を“カイジだー、カイジだー、これはカイジだー、この音、僕にわかる”って言うよ。でもね、それはカイジじゃなくて、普通の総武線、僕は見えるから。でもね、僕なにも言わなかった」
「そう〜」
なんだか、心痛く感じた。
K君の様子を想像して、同時に、ふみは成長したなって思って。
「K君、学童には行かないの。行けばいいのにね。でも行かないだって。K君もし学童に来たら、“タスケ”の時、僕はK君を当てたりしないよ。だってかわいそうよ」
タスケとは、ホールで走りながらボール投げして相手に当てる遊びらしい。
学童にいるふみは、もっぱらこのタスケをしている。お迎えに行く時は、ホールから出て来るふみは、いつも頬が真っ赤で汗だらけ。
パパがお仕事で遅くなる。どうせ、ふみと二人とも食欲がなく、ベッドで横になって、頑張ってペッドボトルの水をとってきて、ふみに飲ませる。
「パパ帰ってこないね」
「ね、遅いね」
パパ帰ってきた。スポーツドリンクをたくさん買って、ビスケット買って。
パパは、ふみをお風呂じゃなくて、シャワーにして、すぐ寝かせて、昼寝してるにも関わらず、ふみはすぐ眠った。
明日、お熱が下がらないならどうしよう。連絡帳に挟む担任へのお手紙を書く。
前回の保護者会で、急病の時も、できれば連絡袋を誰かに託して学校に持ってきてほしいと。毎日のように、何かのお知らせが入れられて帰ってくるから。
それに週明けには白衣を持って行かないと。
寝ているふみの体温は、上がったり下がったり。
夜中、ふみが起きてトイレへ。
戻って来てから体温を測ってみると、36度台に。
よかった。
朝起きて、「ふみ、学校行けそう?」
「行く」
またお手紙の内容を書き直す。今日の学童はお休みに。下校したというメールをもらったら、学童へお迎えに行く、との内容に。
ふみは小雨の中、学校へ行った。
「今日、体育あるからな」と登校道を歩くふみが言う。
「休んだほうがいいんじゃない?見学とか」
「見学はないよ。体育やらないなら教室にいるしかない」
「いいじゃない。今日寒いし、体育はね」
午前は携帯に何の連絡もない、つまり、ふみは変わりなく、ってことね。
2時過ぎ、下校しましたとのメールが入り、30分ばかりのお休みを貰い、わたしは小走りに学童へ。
遠くから、児童たちの列が、二人の先生について、雨の中をだらだらと行進してるのが見えた。
「今日はだいじょうぶでしたよ、食欲も普通にあって」先頭を歩く女性の教員が微笑む。
よかったよかった。
「給食ずっと全部食べれたのに、今日はちょっと減らしてもらった。あ〜悔しい」
「しょうがないよ、体調イマイチだもん。治ったらまた頑張って全部食べれるようにね」
ふみとそのまま塾へ向かう。
「先生に言ってね、先週金曜日に国語の宿題をもらうの忘れたって」
「うん。ぼく、忘れた宿題を、今日、やってやろうかな」
おぅー。
Sちゃんのパパからメール、水曜日の柔道は、自分の仕事の関係で行けなくなって、と。
U君のママからもメールあって、U君はだんだん疲れがでてきて、うちに帰ってぐったり。それに水曜日に、学童のクッキングを申し込んでるから、たぶん遅くなる、と。
「ふみくんもクッキングを申し込みましたか」とU君のママが聞く。
塾からふみをお迎えして、さっそくそれを聞いてみた。
「申し込んでない。ぼく、そういうの、まったく興味ないから。やんない」
「そう〜。そういえば、今日、学校でコセ君と会った?」
「会ったよ、でもぼくのことを、××××サーカスを言わなくなった。だからぼくもコセコセコセツを言わなかった」
よかったよかった。