炎天下

今日は、よいお天気、よすぎるぐらい。

今日は、ふみの運動会。
朝7:50うちから出て、午後の4時過ぎに、やっと戻って来た。

ほんとうに疲れた。小学校の運動会、保育園のより、はるかにハードで、これが毎年あるんだね。はっはっは。


K君も参加した。そのお母さんと、お母さんのお姉さんが来て、わたしの傍に一緒に座った。


K君のママは、会うといつもお礼を言って来る「いつもふみ君にお世話をかけています」と。

それぐらいしか、K君のママと接触はなかった。

今日お話をして、わりと気さくな、明るい方で、よかった。


K君が走る、コースを示す円盤を気に入ったようで、途中はその円盤の上ばかり走って。

K君のママは「イヤだ、恥ずかしい、もう」と言って、Tちゃんのママが「K君かわいい。たぶんそれを気に入ったんでしょうね、かわいいよ」

「そうですか?なんか恥ずかしい」とK君のママは笑う。


忍者の踊りの時、人数が多いせいか、「K、ちょっとパニクっちゃったね、しょうがないね、ははは」K君のママは笑う。


途中K君のママはいなくなって、また戻ってきて、「あたし、向こうの正面を撮りに行ったのよ、親ばかでしょう?ははは、K、全然ちゃんと踊れないのに」


なんにも言えなかった。わが子を思う母親の心、痛いほどわかる。

K君の出番じゃない時、K君ママは話してくれて「毎日あたし学童のところにお迎えに行って、ふみ君だけよ、うちのKの手をちゃんと繋いでくれて、本当に助かるのよ。お礼言ったら、“いいえ”とか言うのよ…」

「K君のことが好きだって言ってましたから」


「あたしもKから聞いて、や〜、もう、ありがたくてね。なんでふみ君と同じ組にならなかったのかな、一緒だったらあたし、どんなに安心か。雨の日なんか、うちのK君は、レインコートしかダメで、傘はうまくさせないから。なんとふみ君、Kと手を繋ぐため、傘もさせないのよ…」


へぇ〜、ふみ、そうなんだ。一回も言ったことがないわ。濡れてるなって思ったら、そういうことだったんだ。
なんだか、胸が熱くなって、ふみ、立派だなって。


お昼ご飯の時に、ふみと二階のスペースで、二人っきりで食べることに。


「ふみ、K君のママに、いっぱいお礼言われたよ」

「んん〜」

「ふみ君を感謝してるって、いつもKをやさしくしてくれてって」

「んん〜」

「そうだふみ、雨の日、K君と手を繋いで、ふみは傘もささないんだって?」


「だって、K君と手を繋いで、片手、僕、傘させないもん」

「…」

「あとは、僕は濡れるの嫌じゃないからね」

「…」ふみ、かっこいい〜、なんてかっこいいんだろう。


ふみは、この事をわたしに一回も言ったことがない。それは、ふみから見れば、当たり前過ぎて、わざわざ、なにかいいことをしてあげたよっていう気持ち、少しもないんからだ。

ふみ、立派だよ。

涙が出そうになって。


「ふみ、これから、また誰がK君になにかをしたら、絶対ママに言ってね。相手もふみの友達だから、ふみは言いづらいのもあるでしょうし、あとは、どれが意地悪で、どれが悪意のない行為かは、まだふみには判断の難しいことだから、ママに言って、ママが考えるから、先生に言ったほうがいいか、K君のママに言ったほうがいいのか。でないと、たいへんなことになったりする場合もあるから」

「わかった」ふみは素直に返事する。


体が弱いK君、よくお休みする。入学式の日も、K君は病院で点滴を受けてるため、参加できなかった。2組の担任のN先生が、教科書などを持って、K君のおうちまで届けに来たそうだ。


「日差し強いね、お弁当だいじょうぶですか?あたしなんか、日傘を持っても意味ないから、日除けに使ってください。」K君のママは、日傘を広げて、わたしのお弁当入りのカバンの横にさした。


心痛い。
何も言えなかった、とてもつらい気持ちになって。


母の日、毎月1回あってもいい、なぜか意味もわからなく、こう思った。



PTAの方たち(わたし除く)動いてる動いてる。
来賓席にお茶を運んだりして。あ、広報の方たち、各現場で写真を撮ってる。


腕章さえあれば、競技を間近に写真を撮ることができる。

でも前回、腕章が足りないとかなんとか。うん、わたしは、いいや。

それに、入口で配られた赤いリボンのような鉢巻も、丸めてカバンに入れてるだけで、いわれた保護者の玉入れ競技に参加する気も、ないや。


ストレスを感じること、もうやめよう。


そうは言っても、やはり気になりながら。


運動会が終わって、校庭でPTA広報のYさんとばったり会って、慌てて、「お疲れ様です。今日は暑いですね、ずっと写真を撮っていらして、本当にお疲れ様…」
「9日の集合に、みんな写真持って来ますよね。××さんのも、期待してますよ」

き、期待、しなくても、いい、のに。期待されて、困る。


保育園の運動会と違って、人数は多いわ、服装は同じだわ、場所は広いわで、ほとんどふみがどの辺にいるのすら、よく見えなくて、写真なんぞ、諦めてるわい。日陰で日傘をさして、K君のママとただお喋りして、なんとなく子供たちを眺めているわたしだけど。たまに何枚かを撮って。


困ったな〜、助けを求めに、同じ保育園出身の親のところへ。
「Hちゃんのお父さん〜、すみません、写真、撮っていらっしゃいましたか?」大きい三脚を持ってるのを見て、Hちゃんのパパに声をかける。
「撮りました撮りました。ふみ君のも撮ったよ、送りましょうか」

「いいえ、ふみ君のじゃなくて、運動会の、なんでもいいんですけど。わたし、あまりちゃんと撮ってなくて、困ってます」

「…、PTA?」とHちゃんパパは声をひそめて。
「そうなんですよ」
「わかった、だいじょうぶだいじょうぶ、いっぱい撮ったから、はははは」大阪出身のHちゃんのパパは、明るくて豪快な方だ。


助かる〜
保育園出身のわたしたち、お互い助け合って、こう言う時は、ほんとうにシミジミ思う。


嬉しく玄関へ走る、ふみたちはそろそろ降りて来るでしょう。

同じ組の幼稚園出身の3人のお母さんが立ち話して、「お疲れ様」とわたしに声をかける。

「お疲れ様です」

「ね、××さん、思いません?今日みたいな天気、もっと具体的にお知らせに書くべきですよね」とAちゃんのママが。

???

「あのね、うちの娘には、顔や腕には日焼け止めを塗ったんですけど、膝がね、焼けたんですよ、茶色っぽく、かーわいそうで。ね、思いません?先生は、お知らせに、日除け用の大きめなタオルをお持ちくださいと。そうしたら私だって、娘に教えるよ、頭に掛けるなり、膝に掛けるなり…」


???「ま〜、ね〜、今日、本当に日差しが強いですよね」


「でしょう?先生はそれを配慮して下さって、一言でも運動会のお知らせに、それを書いて書くべきと思わない?」

「…」わたしにどうしろとおっしゃるの?


「××さんは役員ですよね?先生に言うべきだと思いません?」

役員って、なんの?PTAでしょう!そういうことかー、さすが幼稚園出身で、もうこういったことに慣れてらっしゃる。


「はー、ええー」とあいまいな答えをして、その場を去った。


しかしAちゃんのママ、わたしたち日陰に座ってる時、たしかに児童席でずっとうろうろ、団扇を持って、担任のK先生が児童席に戻ると、Aちゃんのママはさっそく傍で団扇をK先生に向かって煽ってたよ。

K先生、一人でたくさんの作業をこなしてるの見て、ご苦労だと感じて、労わってるなって、感心してたのに。

K先生のたいへんさ、Aちゃんのママがみんなよりわかってるかと理解してたのに。


こういった苦情、わたしが伝えなければならないのでしょうか、全然わからないや。この組、学級代だっていらっしゃるし。ま、わたしに言ったんだから、先生に伝えないとな。
嫌だな、こういう内容を伝えるのは。


でも、伝えないと、また問題に。あの三人ママの光ってる目が頭に浮かぶ。



学校に出て、ふみとコンビニへ向かう。
「ふみ、アイスを食べようか」
「え?!いいの?やった!実はね、みんながね、こんなに暑いから、うちに帰って、西瓜食べる、アイス食べる、って言ってたの。僕がね、うちに帰ったらね、アイスを食べるんだよって言った。やった。ウソからでたマコト!」



コンビニの2階でアイスを食べ、急に気持ち悪くなった。


歩いて帰って来たら、腕に、赤い蕁麻疹が。


両腕に、左右対称に。
ストレスかな。


夜になると、赤い湿疹、だいぶ褪せた。


連絡帳に、大きめのタオルのこと…、頭にいっぱい。

「イジワルのこととか、僕の耳は聞こえないから」とのふみの言葉を浮かべ、ふみ、尊敬するよ。