ミニトマト
ミニトマト、いつの間にか、実って。
ふみは早朝に霧吹きを持ってお水をやってるけど、どうも気付かなかったみたい。まだ小さいからね。
実ることって、うれしいね。
ふみが学校で育てた朝顔も、持ち帰りに。
けど、学童クラブに置きっぱなし。
なのに、何事もないように、今朝、「うん、今日は学校から朝顔を持って帰るよ」と。
夕方、学童へお迎えに行ったら、学童の先生が、ふみくんの朝顔、昨日からここに置きっぱなし。と。
それでバレて、ふみは、へへへと笑う。「ママ、なんか食べ物ない」
なにを言ってる、学童の玄関に入った途端、甘〜い香りが漂ってきて、聞いたら、トーストを作ったそうで。
保育園と違って、学童のおやつは、量は多い、甘いものばかり。厨房がないから、ほとんど買ってきたお菓子。
すこし心配。飲み物も、それでジュースとかになっちゃう。
明日、ふみと長方形の植木鉢と土を買って来ないとね。
朝顔やゴーヤたちの蔓のあるものを、同じ鉢に集めて、設置したネットの前に置きたい。
今のゴーヤの鉢は、土が浅い、実っても、観賞用の袖珍のゴーヤになりそう。
昨日、採血の結果を聞きに。
鉄分、4月に治療終わった時の半分まで下がっていた。
さっそくまた注射を初めて。
今度は一回分を前より多めに、でないと血管がジョウロみたいになるんじゃない?
今日も行って、注射を受け、先生にその疑問を投げかけたら、
「ならないよ、しいさんの場合は、まだまだそこまでは」
しいさん?まるで職場の知り合いという感じで、ちょっとびっくり。職場関係の方は、みんなわたしのことをしいさんを呼んでる。
あとは、ふみくんのママ、あとは苗字で。苗字で呼ぶ人が一番少ない。
しかし鉄分、どうなっているのでしょう。胃はまったく鉄を吸収しない、という解釈以外は。
だからもう注射しかないんだ。
持病持ちのわたしのところに、よくもこんな元気なふみが生まれて、そう思うたびに、感謝の気持ちでいっぱい。
ふみにも、いつもありがとうって言ってる。
ふみはまた毎日Kくんの手を繋いで下校する。
通学路で走っちゃいけないのに、K君は歩かないで走ってるか、スキップするばかり、と、ふみは文句を言う。
K君は、まだ落ち着いて上手に歩くのできないんだ。人間は、踵(かかと)から、つま先までの順番で歩くのは、大したことだよ。誰もできるとは限らない。
K君は、ふみたちより何年か遅れて、いつかは、踵から爪先へ、という歩き方ができるよ、きっと。
と、ふみに話したら、ふみは黙って聞いてた。
ふみは、理解したとわかった。
それほど長くはない通学路、ふみは毎日、ほかの子より神経を使うことに。責任も。
「今日は信号がピカピカして、K君と走ってたら、間に合った」
K君は、メガネもかけてるし、もし転んだら、とても危険だから、信号は、例えみんな渡ったにしても、ピカピカになったら、決して渡ってはいけない。
ふみは黙って聞いて、理解したとわかった。
「ふみ、ふみは弟や妹がいないけど、いたら、毎日こうやって神経を使うのよ、弟がいるんだと思って。ね?そうしたら、K君だけじゃなくて、K君のママもどんなに助かるか。ふみ、これはすごい功徳だよ、パパもそう言ってるよ」
「クドクって?」
「見えない財産、貯金。いっぱい貯まったら、自分が一番困る時、貯まった功徳が出て来て、自分を助けてくれるのよ」
あ、なんてせこい自分であろう。
ふみは、そういう為に、いいことしてやったぞという為に、K君にやさしくしたんじゃないのに。
「ふみ、K君と手を繋いで帰るのは、いつまでだろう、わからないね。もしかして、6年間。ふみ、だいじょうぶ?」
「うん。」
「ふみはえらいね」
「K君いつも言うよ、手を繋ごうって」
「休み時間、いつも誰がK君と遊んでるの?」
「K先生」
またK先生かー。
ふみの担任のK先生、ほんとうに万能のような存在。
勉強を教える、運動会の踊りの振りつけを教えるのも、全部K先生。
ご飯は子供たちと一緒に食べる。
牛乳が苦手な子が、瓶の牛乳を半分飲んで、もう飲めないと言うと、K先生はその残りを飲む。
おまけに、一言注意書きしてないせいで娘の膝が日焼けしたとのクレームがあったり、K先生またあやまらなきゃいけない。
K先生はほんとうに子供たちが大好きでしょうね。でないと、やってられないね。