蒸し暑い

梅雨らしい蒸し暑さになって。

雨は時折ぱらぱら、昼から晴れ間も。

気温が上がって、じめじめと。


都内のアジサイ名所に行ってみようと思ったり、けど、その気分になれない。まして鎌倉までアジサイ見に行くなんて、もっとなれない。






H君、毎朝の通学路で、自販機のお釣の出口をチェックしているらしい。

ふみにも一緒にやるようにと言って、ふみも登校道で一緒にやってる。


H君、一回だけ、それで、取り残された百円を得て、ジュースを買って、それで毎日やるようになった、のだそうだ。


深く考えず、の行動でしょうけど、わたしはすごく嫌な気持ちになった。


子供の頃、誰もが似たようなことをしたでしょうけど、特に男の子は、けど、それをふみから聞いたら、とても嫌な気持ちになった。

こういうことをする子は、いずれ平気で万引きもできるようになるんではないかと思う。



あれこれ考えて、ふみと話しあうことにした。


ふみは、ただそれをやるの楽しくて、ただそれだけのようだ。
お金を得てどうする、何を買うのか、そんな具体的なことは考えてないようだ。


「誰かの取り忘れたお金でしょう、それは人のもの、自分のにするなんて、ドロボウと同じじゃないの。ママは恥ずかしいし、悲しいよ…」


ふみは、あんな面白いことをするの、何がいけないのか、やはりわかっていないようだ。


仕方なく、人のものを取るのも、拾って自分のものをするのも、お巡りさんが捕まえに来るよと言ったら、やっとこたえたみたいで、もうやらないと約束してくれた。


「ふみたちは、なんであんなことをやろうとするの?Tちゃんみたいな子は、そういうこと、絶対しないよ」

「僕じゃないよ、Hが言うから一緒にやっただけだもん。」

「Tちゃんなら、たとえ誘われても、絶対やらないよ、自分の考え持ってるから」

「Tちゃんね〜、いつも、めちゃ正しいよ、正し過ぎで、つまんないよ」

?!「…、じゃ、H君みたいに、あんな恥ずかしいことするのが、つまらなくないのね、面白いのね、ふみはそっちがいいのね」

「ぼく?ぼくは、どっちでもない、ぼくは真ん中の道を歩いてるんだよ」


「…」
これは小学校1年生の発言でしょうか。わたしにはわからない。


ふみは、何を考えて、何をやりたいのか、わたしはちゃんと知ってるのでしょうか、よく知らないのでしょう。きっと。


ふみはやけに機嫌がいい、言われても怒らないし、反発もしない。

たまにチラッとあきれた顔を見せて、「なに?」と聞くと、

「え?まだかなって思って」と、苦笑いを見せる。



わたし、もう自分の能力の限界を感じる。


「ママ、まだぼくのこと好き?」ふみは急に聞いてきた。



ふみは、大胆さと、まだまだの幼さが共存して、
危なっかしくてならない。

ふみを信じようと思ったり、
この子、どうなるんだろうと心配で心配で…にもなったり。


ヒヨドリが飛んできて、ベランダの柵に止まり、野菜たちを物色してる、しゃがんでるわたしと目が合っても逃げようとしない。

「いつまでそこにいるの?」と、中からふみの声が。

手を叩いて、ヒヨドリは飛んでいった。