搬入

朝、ふみに早く塾の宿題を終らせて、二人は出掛ける。わたしの用事に付き合わせて。


デパートの商品に付いてる「大人気」の札を見て、ふみはわたしに近づき、声をひそめて、「ママ、言っちゃ悪いんだけどさ、“大人気”と書いてるのは、売れないからよ」
(≧∇≦)


用事を済ませて、うちに戻って、さっさと昼食をとり、ふみは、また出掛けた。


今日は、地域の子供支援センターのお祭りなんだ。


ふみたち学童クラブの子が実行委員会になって、ふみは、ヨーヨーコーナーの受付に。


わたしも行かねば。
午前のハードスケジュールで、さすが疲れてしまって、2時に会場に行くのに間に合うように、携帯のアラームを設定して、ソファーで横になる。
あっという間に眠ってしまい、耳元で「エリーゼのために」が激しく鳴る。
20分前だ。もう少し。

再び「エリーゼのため」が聞こえて、10分前。もう行かなきゃ。


今日のお仕事は、お祭りのお手伝いと、運動会で使うものの、会場への搬入。


明日は、学童クラブの運動会。

区のいくつかの学童の大連携で、毎年一回、運動会をやる。

子供たちの競技、大人たちの交流、各学童がバザー用品も集めて、そこでバザーも。


昔、大人の騎馬戦もあって、そこで、あるお父さんがアキレス腱を切るほどの大ケガをして、それから、大人の競技は控えたそうだ。


わたしは、学童の父母会では運動会の担当(みんな、なにかしらそれぞれ担当しなくちゃならない)、けど明日の運動会は、出ない予定。

ふみは水泳ですし、わたしもちょっとめんどうだと思って。


木曜日の夕方はバザー用品の値札を付ける作業だった。
わたしはヨガで参加できなくて、運動会も出ないし、ちょっといくらなんでも通らないと自覚して、バザー用品の会場への搬入を積極的に申し込む。


Kさんが車を出すという話だが、Kさんの子供が急に熱を出してしまい、もし今日になっても治らないのなら、タクシーで運ぶことに。費用は父母会が出すが、問題は、いまさら、替わりに運ぶ人が探せないんだ。




お祭りの会場に着いたら、もう行列ができてる。


ヨーヨーコーナーに行ったら、午前の部の担当の、ふみとU君がいて、ふみは、ヨーヨー釣りの針を配る役で、U君はカードに、受付したというサインの青い線を書く役。


まあまあ真面目にやってる。


Kさんが来た。発熱したお子さんを連れてきて、
だいぶよくなって、やはり祭りに来てる上のお姉ちゃんに面倒を看てもらって、車を出せる、ということになって。


バザー用品、わりと多い。大きい袋がいくつか、段ボール、旗。


Kさんの車は、後ろに荷物がたくさん積めるタイプ。助かる。これはタクシーなら、一回じゃ厳しいかも。

運動会会場は、区の、ある中学校になってる。


Kさんは、てきぱきとカーナビに住所を入れて、二人はお喋りしながら、会場へ向かう。


Kさんは子供が3人で、上の子は5年生で、今は進学塾に通ってる。


「東京だからですね、田舎にいる時、中学校からお受験とか、ないのよ。高校も、少数じゃない。けど東京は、中学校は公立に行くほうが少ないじゃない、もうたいへん。うち、下の二人は今、学習塾でしょう。上の子は進学塾、進学塾は少なくても月4、5万はかかるのよ。でもまあ、この辺なら、老舗の進学塾が多いから、近くて助かるけどね。電車に乗って、遠くまで塾へ通う子もいっぱいいますからね…」


目的地の中学校の近くに着いた。細い路地で、ちょっと迷ってる時に、中年男性が近づいて、窓をトントンして、「連協ですか?」と、

「連協です。××学童です」とKさんが。


その“連協”の方は何人もいて、道を誘導したり、荷物を運んだりして、助かるー。

Kさんの話しだと、連協の方、みんなボランティア。かつて学童に子供を預けて、たいへん助かって、という感謝の気持ちで、こうやって休日に奉仕している。


運動会を主催したり、PTAと連携して研修会をやったり、学童保育を向上させるためにとか。


「お疲れ様です」と、お互い言って。

「明日、お天気はっきりしないみたいね。ま、とにかくやりますから、よろしく」“連協”のお父さんたち、元気いっぱい。


ずっと心配していた搬入作業、こんなにラクに終ったわ。


帰りもずっとKさんとお話を。
「学童は3年生まででしょう、上の子が4年生になった時に、本当にたいへんでした。私もお勤めしてるでしょう、夏休みとか、もうどうしようって感じ、それで学童の有り難さを、しみじみと…」


夏休み、春休み、長いもんね。


戻ってきて、もう4時になり、お祭りも終り、長々と反省会中。


しかし、このお祭り、区の資金でしょうね。
食べ物から飲み物、おもちゃ、みんなタダ。
金券というカードを配って、それを持って、一通りもらえる。

わたしたちお手伝いのお母さんもお菓子がもらえて。たいしたお手伝いしてないのにね。


帰りに、学童のOさんがわざわざ来て「ふみ君のお母さん、今日は、ありがとうございます。」

「こちらこそ、お疲れ様です」

お互い笑顔いっぱい。


M君のママ、近くで笑顔。
さっき、M君の歌手のママに、わたしとOさんの先日の“衝突”を話してある。


階段を降りて、「オトナでしょう」とわたしが言うと、

M君のママはハッハッハッと笑う。