電話
朝早々、電話が鳴って、学童からです。
ふみくんの学校の上履き、学童に忘れてますよ。と。
なんだ、ちゃんと学校からは持って帰ったものの、学童から持って帰るのを忘れたんですね。
よかった、洗えるわ。
「ふみ、ママお化粧もしてない、髪も結ってないから、ふみちゃんが取りに行ってくれる?」
「え〜〜、わかった」
「ちゃんとお礼を言ってね」
ふみ、走って出て、まもなく、上履きを持って帰って来ました。
さっそく上履きを衣料品用漂白剤に浸けるわたしです。
電話が鳴って、
今度はKさんでした。
なにか、ものを送って下さる時に、いつも電話をかけてきて、「明日、いる?何時がいい?」と聞くのです。
でも今日は違いました。
「何してるの?今、だいじょうぶ?ちょっと待って、代わるね…」
電話口から、男性の声が「もしもし、覚えてます?」
?記憶にあるような、ないような、そもそも、さほど特徴のあるお声ではないので。
「覚えてない?やっぱり覚えてないんだ、そうだろうな、もう20年近くだもんな…」
Sさんでした。高校の先生のSさんでした。
20年近く前、6、7人一緒に中国の旅をしました。
五台山に行って、北京に行って、モンゴルに行って。
「…お宅にもお邪魔して、ご馳走もなったよな」
そうだったんですか。知人たちを連れて実家に帰って、母親の手料理を食べてもらって、そういうことは何回かありました。
Sさん、その中のどれかのメンバーに入ってたのは、覚えてないですね。
うちに来てたんですね、でも、なんだかそういう映像、動画か静止画像か、一枚も頭に浮かんで来ないです。
「ご家族、まだそこに、お元気で…」
「いいえ、もう、故郷に、誰もいなくなって
…」
「そうですかー、20年近くも経てば、いろいろ変ったのも当たり前ですね、そんなもんですね…、僕は、高校、変わったけど、まあ、前のところとそう遠くない、定年まで、あと…、あと5年かな、ぼちぼち、やってる…」
懐かしかったというか、不思議な感じでした。
Sさんが出て来る記憶、20年近く前に止まり、こんなにも歳月が経ったんですね〜。
スーパーで、ゴーヤを見かけました。立派なゴーヤ、買わざるを得ない。
結構苦い。