握手
ポリーはとてもおりこう、かわいくて。
羽根替えの時期なので、ふわふわの羽根、大きな羽根、毎日たくさん落ちてます。
ネットで見てみたら、羽根に栄養分を与えるお薬がありまして、ドイツ産。
注文しなくちゃ。
いつだったか、クールな友人に、好きな俳優さんっていますか、と尋ねましたら、
「あまりいないですね、う…ん、強いて言えば、×××?」
へぇ〜、とても意外でした。
映画が好きで、詳しくて、よく観ていた友人は、なんでその若手俳優の名前を挙げるのか、理由はわからなかったです。
主役をやったの見たことがないですし、というか、存在は知ってましたが、それほどよくテレビに出るほうではないです。
だからか、とても印象に残りました。その俳優、なにがよかったのでしょうって。
その間もなく、その若手俳優がわたしの大好きな「相棒」に出ました。
犯人の主犯役として。
暗い陰のある人物像を、よく演じてました。
確かに、ほかの若手には無い深みというか、ワケアリな雰囲気があります。
それに、声がきれいなので、歌もうまいです。
あとは、映画について、かなりディープな知識をお持ちで、
映画評論もやっていて、
自分の独自の理解や、思想をお持ちです。
なんとなく、友人がその俳優が気になるのは、わかってきました。
夕べは、友人とメールのやりとりで、今日、その俳優の握手会に参加することに。
友人は、「久しぶりにミーハー気分です」と。
わたしは、久しぶりにではなく、初めてです。
追っかけや、ファンクラブなど、なにもしたことがないですから。
知人のひとりに、ずっと前からある歌手の大ファンで、ファンクラブに入っていて、時々コンサートに行ったり、ファンクラブ特典の写真撮影に行ったり、
携帯の待ち受け画面を見せ、その大物歌手とのツーショット、知人はいきいきと、きれいでした。
わたしは、そこまで、好きな、ファンクラブに入りたいほどの、俳優や歌手、いないな〜
なので、握手会は初めての体験、別にその俳優の大ファンでもないですけど、握手会を楽しみにしてました、どうなんだろうって。
わ〜、全部女性、各年齢層の女性、みんな幸せそうな顔で、いきいきとして、
あ〜、それぞれ、その俳優が好きになるドラマがあるでしょうね。
けど、並んでいるわたしは、恥ずかしくて。
こんなのしたことがないから、正直、バカにしてましたから、です。
何年か前でしょう、知人に頼まれ、書店に並んで、韓国男優のカレンダーを買った時の気持ちを思い出しました。
できれば周りに「違うんです、違うんです、わたしじゃなくて…」と説明したい気分でした。
今日も、周りの目を気にしながら、挙動不審に近いほど、「恥ずかしいですね」と友人に言ったら、
「自意識過剰よ、誰もあなたを知らないでしょう」
ハッハッハ、(*^O^*)、そりゃそうだわぁ、でもやはり、恥ずかしいんです。
列は早いスピードで動いて、とうとう小さく区切った握手会場に入りました。
「いやね、アルコール消毒するんだ、なんか嫌ですね」
入口で手を消毒するのを見て、わたしはまた文句を言います。
「いいじゃない、千人も超えてるから」と友人が。
それもそうですね、なにか菌があれば、拡がるチャンスですもんね。
やっぱり、オーラありますね。その俳優さん。
握手されるところに、女性スタッフの方がいて、長く話そうとするファンを抱えて、離します。
「なんか嫌ですね」とわたしはまた言って、あ、千人も超えてるからね。
友人は、わたしの前に握手をして、何かの言葉をかけました。
わたしの番だ。
なにも言わず、1秒が経ったかどうか、わたしはすぐ手を離し、サッサとその場を去りました。
出てきて、大爆笑。もうなんのために来たのかって、
友人は「わたしは、ちゃんとニコッと笑って、頑張って下さいって言ったよ、当たり前でしょう」と。
爆笑、爆笑。
わたしたち、わりと後のほうなので、間もなく握手会が終わって、その俳優が出てきました。
待ってるファンたちに手を軽く挙げたら、ファンから一斉に、ギャーでもない、アーでもない、
「はぁ〜」のような、ふぁんとした、悲鳴に近い、一種の虚しい無念、に聞こえます。
駐車場の入口で、俳優は再び振り向いて、軽く手を挙げて振って、軽くおじきを、
また「は〜ぁ」との悲鳴が…。
しかし俳優や歌手との職業、不思議な職業ですね。
自分の存在だけで、これだけの人間に夢を与えるんだもの。
「手を振っただけで、こんな反応。もうあなたなら、この仕事をやめられます?」と友人が。
ほんとうほんとう、自分の存在、ものすごく価値があると実感するんでしょうね。
生まれ変わったら、こういう人生を味わって見たいな〜、たいへんさを除いて。
握手会、最初で、恐らく最後ですね。