一つ可能性がある
今日も雲一つない青空で、眩しい冬の陽射しでした。
気温は低いけれど、湿度がなく、洗濯日和です。
去年は、ふみの年賀状をなにも用意してなくて、お友達からもらい、慌てて年賀状を作りました。
今年は、ふみ用のも作りました。
さっそくふみを催促し、今日、一枚書きました。
住所氏名を書き終わって、年賀状の言葉は、
「今年は馬年だね」と書こうとした時に、わたしは却下しました。
そうしたら、
「3年後僕たちのとり年だね」だって。
そう書いてる時に、つけっぱなしのテレビから、地震速報、
まず八丈島、その間もなく、宮城。
「たいへん。早く髪を整えないと、ここも揺れたら、逃げられないよ、ぼさぼさ頭じゃ」とわたしは急いでクシを手にします。
「もうママは、命とおしゃれ、いったいどっちが大事なの?」とふみが。
どっちが?どっちも、かな。
生きているなら、できるだけ、きちんとした身嗜みで居たいですね。
ザリガニのハサキチのエサがなくなりまして、近くのペットショップにはたまたまなかったので、今日、ふみと新宿へ買いに行くことに。
冬休みの間、毎日一万歩を目指したいと思って、ふみと歩いて向かいました。
わたしの予備用の草履をふみの鞄に入れたいと頼んだら、すぐOKしたふみでした。
これなら怖くないから。
ふみは、なんでも“普通でいいよ”、“普通が一番”と言うのです。
歩きながらそれを思い出して、「あ〜、わかった、ふみは、“誉められもせず、苦にもされず”の人になりたいよね」
「え?う…ん、うん!」
「宮沢賢治の言葉よ、“誉められもせず、苦にもされず、そういう人、わたしはなりたい”って」
「あ〜、あったね、“雨にも負けず”の」
「ママは、苦にもされずになりたいけど、誉められもせずはちょっと寂しいな、誉められたいよ」
「誉められてばかりな人は、いないじゃない」
「え?」
「だから、誉められてばかり、そんなことはあり得ないよ。誉められると、必ず悪くも言われるよ、だから両方要らないよ」
「そうか。そうかな、誉められて、批判されないで、そういうのもあるんじゃないのかな」
「ないよ、ないない。誉められたいならさ、批判されるのもいいと思うならいいけど」
(((・・;)
「ふみ、将来哲学部に入れば」
「テツガクって?」
「う…ん、むずかしい人生を、簡単に…、むずかしいね、哲学を説明するのは。でもふみ、ちょっと覚めてるね、もう少し夢のあること、ない?」
「冷めてる?ぼく熱くないよ」
物理的な冷めるではないのよ。
醒める?
歩いて新宿に着いたら、人の多いことにびっくり。
観光客も多くて、日本人、外国人。
「ふみ、外国の方に英語を喋れる?」
「おお。ハロー、バイバイ」
なにそれ(((^_^;)
ザリガニのエサを買って、また歩いて戻ります。
遠くから、Hくんとお母さんと、男性の方が、真正面から歩いてきました。
「ふみ!」とHくんは走ってきて、二人は、コンビニのスタンプを押して、仮面ライダーのなんとか景品を応募する話をして、盛り上がって。
Hくんのお母さんは、ザリガニのエサを買いに行ったと聞いたら、自分のザリガニが、脱皮失敗して、死んでしまったとの話をして、
男性の方は、少し離れたところに立って、
わたしは始終男性のほうを見なかったです。
そのまま別れて、Hくんは、「お父さん〜、待って〜」と走って行って。
!!
「お父さん!? 今、Hくんはお父さんと言ったよね」とふみに聞くと、
「言った、お父さんって」
「あ〜、どうしよう、ご挨拶をすればよかったのに、わたし、バカだな〜」
「なんで挨拶しなかったの?」
「あのね、この前がね、Hくんと会って、お母さんはもしかして再婚して、秋田に行くかもしれないって、それは、おじさん1号、で、おじさん2号はちょっと病気があって、おじさん3号は…」
「なになに、意味わからない、Hくんのお父さんは?」
「お母さんと別れたのよ、で、お母さんは、またHくんに違うお父さんを探したいから、何人かいるらしいから、迷ってるって、Hくんが言ってた。だから今日の方は、そのおじさんの第何号かなって、安易に声をかけないほうがいいのかなって、大人って、いろんな都合があるから、見てみぬ振りは必要だから。でも今はHくんが“お父さん”って呼んだね。あ〜、なんか失礼しちゃったじゃない」
「何号だって、普通にこんにちはって言えばいいじゃない」
「まったくぅー、バカだな、なんか、そういう複雑な事情を知ってると、なんとなく緊張してしまって。…、あれ?Hくんって、最近名字変わった?」
「変わってない。Sのままだよ」
「え〜、そう、じゃ、結婚してないかな、でもお父さんって…」
「一つ可能性があるよ、その男の人の名字も、S!」
なるほど!
今日は、1万2千歩あまり歩きました。
草履の鼻緒、無事でした。