選択









こちらはふみの作文に出た「吉野」です。


蝋梅の「素心蝋梅」という。

こちらは違う品種の蝋梅かしら。香りは同じですけど。



ふみは今日、パパのカメラでいろいろ写真を撮ってました。

木の根っこに生えてる茸、
ボツンとしてる鐘、
剥き出してる岩、
水面に浮かんできた亀。

ふみがカメラでわたしを撮ってくれたのは、この一枚だけでした。




身にまとふ
黒きショールも
古りにけり

−−杉田久女








作文の中の駅構内の炭酸“爆発”、あれはふみのやることの、ほんとうに氷山の一角に過ぎません。



最寄りの電車について、今朝の晩春のような暖かく湿っぽい空気はどこに行ったのか、代わりに強い北風で身震いする寒さになって、
「ふみ、あなたを育てるのは、ほんとうにたいへん、ママはあまり器用な人じゃないから、もう、たいへんで…」
「でも、ぼくは、ママを選んで、ママのところに生れたんだよ」


冷たい風の中、わたしはその一言で、涙がぽろぽろ、嗚咽するほどでした。