はとこ
忙しい朝。猛暑日の朝。
仕事に向かおうとした時、電話が鳴って。
ふみの小学校からです。
「ふみくんのプールカード、何も書いてないですが…」
(゜ロ゜;
学校のプール、今日は検定の日なんです。
ふみ、200メートルのクロール、挑戦しようと、朝、意欲満々でうちを出たのです。
プールの日には、朝、必ず体温を測って、体調を記入して、サインして。
それがないと、プールに入れてもらえないのです。
今朝、なぜかそれをすっかり忘れました。
電話は、ふみの2年時の担任だったN先生です。
「ふみくん、この暑さに、せっかく来たんですから、お母さんに伺って、もしふみくんの体調だいじょうぶなら、この電話口で…」
さすがN先生、柔軟性が違うわ!
あ、遅刻しちゃう遅刻しちゃう。
近所の公園のそばを通って。
暑いわ〜、この時間、すでにこの暑さに。
あ、道端になにかチラッと青い光が。
ほんのわずかだが、光ったのが目に入って。
しゃがんで見てみたら、
わー、カナヘビ!!
以前、もっと大人のカナヘビを見てたけど、これは小さくて、まだまだ子供だわ。
遅刻しちゃう遅刻しちゃう。
でも、せっかく出会ったから、写真を撮らざるを得ないじゃない。
まだ子供だという証に、尻尾、見事なブルーですね。
口に何かをくわえて、お煎餅の欠片?
バッグになにかないかな、あ、遅刻しちゃう遅刻しちゃう。ごめんね、バイバイね。
従兄から突然電話がありまして、まったく予告なしに、一家で東京に来てます。
びっくり!
さっそく午後会いました。
2年ぶりかしら。
子供は成長したな〜って、感慨深くて。
ふみも帰ってきて、「受かったよ。200メートル。クロールで」
「200メートル!よくやったね。パパはクロールなら、やっと50メートルかな、もう疲れちゃうな〜」とパパが。
「麦茶、足りた?」とわたしはふみに聞く。大きい水筒を持たせたから。
「Yくんがね、水筒忘れて、飲ましたから、もう空っぽ。でね、Yくんを特訓してあげたらね、20メートル合格した」
Yくんは水泳が苦手で、25メートルのコースを泳ぎきれなくて、20メートルに挑戦。
ふみは、Yくんにビート板を持たせ、足を持って動きを指導、腕の動きも指導、それでYくんは20メートルを泳げた、とふみは嬉しそうに語る。
しかしふみは200メートル!25メートルのコースを4往復分連続。すごいすごい。
プールなんて、一回も入ったことがないわ。わたし。
温泉しか。
学校のプールは屋上にあるため、ふみは真っ黒に焼けました。
“はとこ”の二人と一緒に立って、肌色はあまりにも違って、面白くて。
たちまち、お相撲ごっこ。
ふみより半年下のはとこ、絵の上手なこと!
ささっと描いてくれた4コマ漫画に、びっくり!
まだ5歳の妹の絵も、なかなかのもんです。
さすが従兄は美術専門ですね。
従兄は、小さい時に、ずっと厭きずに絵を描いてましたね。おじおば、どっちも絵と無縁な人ですけどね。
スマホに保存してるふみの絵を子供二人に見せたら、二人、爆笑(*^o^)/\(^-^*)
ふみには内緒ね。
「ずっと着物着てるの?」
「そうなの、春夏秋冬」
「きれいだね」
「ほんとう?嬉しい」
「着物のことよ、着物」
(∋_∈)相変わらず従兄はいつも一言余計なんです。
夕方、ふみはサックスのレッスン。
ふみは先生に函館のお土産、“味噌ラーメン”味の板チョコを渡しました。
「函館!ぼくは中學校の時に2年ほど函館で暮らしてました、函館ね〜、なんか、もう、今は、さびれた町になったね」
さびれた町、ですかー、駅周辺や、山の方しか行っていないですから、そんなイメージ、あまり受けなかったですけどね。
「ごめなさいね、先週休んでしまって、その日ね、銀座のバーにライヴがあって。…。函館かー、じゃ、夜景を観たかな」
「観ませんでした」とふみ。
「そうか、まだ3年生だから、寝るの早いもんな」
「そうでもないですけど」とふみは小さい声で。
「この子、大河ドラマが好きで、必ず観るので、夜景を観に行けなかったんです」
「大河ドラマ?官兵衛か! そうか、それを見てるのか、ふみくんさすがだな、ぼくも観てるよ、あれは面白いよな」
「先生も観てるんですか?日曜日に?」
「日曜日より、土曜日だけどね」
「土曜日?じゃ、再放送ですね」
「そう、再放送しか観れないんですよ、日曜日ね、いつも遠いところに行くから、間に合わないですよ」
サックス、ふみはなかなかいい感じ。
肺活量があるからか、先生の要求をほとんど満たしてる。
先生は、とにかく優しい。
「いいぞ」「ぱっちり」「う…ん、ちょっとだけ惜しい」という言葉しか発してなくて。
誉めて伸ばす。ふみはそういうタイプ。
それと、ふみはサックスが好きだと、わかります。