優しく
晴れて、暖かいお天気になり、ほっとする。
夕方、ふみとサックスのレッスンへ。
「ドー、届いたね、やったね」、ふみの小指はドーの鍵をうまく押せて、ドーの音を出せた。
「ばっちり! 」「オッケー」「うまい」「えらいよ、3年生なのに、大人にも難しいのに、よく頑張ってるよ」
…
先生は、のほほほんとした笑顔で、ふみを褒める。
優しい先生である。
人間は、優しさが一番だなって、しみじみに思いながら、今日の夕方の、サックスのレッスンへ行く直前の、心外なことによるイヤな思いをかみじめる。
「ママは重く考え過ぎよ、全然大丈夫だよ」
ふみはいう。
わたしは自分の落胆の極めの様子をわかっている、わかっていながら、どうにもならない。
わたしって、どうしようもない弱い人間。
「ごめんね、ママがちゃんとしていないから、ふみにもイヤな思いをさせて」
「ぼくはなーんも思わないよ」
「ママね、ふみを羨ましいなって思う時あるの」
「ぼくも同じよ、ママを羨ましいなって思う時あるよ、だから、なんもないよ、だいじょうぶよ」
世の中はみんなヨガの先生や、サックスの先生のような、寛容で優しい人間ばかりならね。
そうでないなら、わたしにふみのような強さをください。
テレビ小説を毎朝を見ている。
女性主人公のエリーのように、逞しくなれれば、と思い、毎朝見ている。
どうやったらそんなふうに強くなれるのかは、まったく見当つかない。
小さい時から、ファンでした。今夜、「あ・うん」を観る。