帰路
ふみのサックスのケースに、ぶら下げているキーホルダー、モンゴルのブーツです。
寒くなりました、さらに。晴れて風もさほどないが寒いですが。
サックスの帰りに、“お腹すいたお腹すいた”とのふみに、山崎の“メロンパンの皮を焼いた”とのお菓子を買って、このお菓子は2回目です。ふみ、とっても気に入ったみたいですから。
「あ、U君」
片親のU君、お母さんはいつも仕事が遅く、U君、学童で6時近くまでいて、鍵を持って、一人うちに入って、お母さんの帰りを待つのです。
U君に会うと、わたしはいつもバッグから飴玉かなにかを探しだして、U君はいつも素直にもらって。
今日もガムをだそうとしたら、ふみが「あのメロンパンの、あげたら?」
U君、素直にメロパンのお菓子を受け取って、笑顔を見せました。
手を伸ばしてU君の頬っぺたを触って、冷たいっ、「U君、寒くない?風邪ひかないようにね」
U君は笑顔で頷いて、手を振って、去りました。
「ママもメロンパンのお菓子を考えたんだけど、ふみはだいじょうぶかなって、だって、食べたかったでしょう。ふみ、えらいね」
「えらいでしょう」とふみは両手を拡げて見せて、えらいポーズ?
「あ、H君だ」
向こうからH君がきて、「あ、ふみ!」
二人近付いて、との時に、男の人の自転車、二人の間にスーっと通りました。
二人は一瞬止まって、それから「どこに行ったの?」「どこに行くの?」と話しかけて、また別れて、
「ふみ!」とH君は後ろから呼んで、
振り向いたら、H君が「さっきの自転車、あれはわざとぶつかりに来たよね」
「え?」とふみ、
「だからさっきの自転車、あれはわざとぶつかりに来たよね、わざとじゃない!?」
「それはないよ、H君の思い込み、じゃね」
H君は手を振って、歩き出しました。
「あいつ、思い込み激しいよ、いつもそう、被害妄想」とふみが。
あっ、真ん丸の月。
ひんやり澄んだ夜空に、よりいっそう神々しい。