ほ、ほ、ホタル来い
夕方、三人はほたるを観に出かけました。
ほたるを観られる時間まで、ディナービュッフェを。
ほたるを観たいとのお客さんは、こんなにも多くて、ちょっとびっくり。
受付を待っている間、一人年配の紳士が声をかけてくださって、隣の椅子を案内されて、座りました。
老紳士がふみに、「雨が降って、どうなるかと思いました。上がってよかったですね」
「はい」とふみが。
「ここ、なんと書いてあるのかな?」と老紳士はパンフレットのほたるのページをふみに差し伸べて、
「ほたる沢と書いてあります」
「そうですか、じゃ、見れるのは、ここですね。ありがとう。暗くておじさんは見えないんです」
ディナーはとってもおいしいです。
ふみは「ここのローストビーフ、おいしい!」と感激して。
わたしには、お料理はもちろんおいしいのだが、デザートが絶妙でした。
こちらは、チェリーのブランデー焼きです。
途中、シェフの方が蝶ネクタイを触ると、そのサインを受けてスタッフの方は電気を落とし、燃えてるブランデーが、光る滝のように。
幸せな気持ちになります。
中庭に出て、ほたるに会いに。
沢のせせらぎの中、ホタル、いました。
ぽつり、ぽつり、柔らかい黄色い光が、空中に点滅したり、木の葉っぱに止まったり、沢辺の石の間に行ったり来たり。
そよ風に吹かれて、目の前のこの幻想的な光景を、ただただぼーっと見てしまうわたしです。
急に、一匹だけ、こっちに向かってきました。
他のほたるのように、橋の下から向こうに行くのかと思ったら、目の前に来ました。
思わず手を伸ばして、すると、橋の柵に止まりました。
そっと持ちあげて、ほたる、わたしの手のひらに、黄色いような、緑のような、かすかな光が…
呼吸もできないほど、うれしかった。
ほたる、飛んでいきました。
うれしかった。
地下に行くと、廊下の窓にも止まって。
わたしの手に止まったのあのほたるかな。
「とてもきれいです」とか、暗い中、真面目に答えてるみたいです。
“LEDかと思いました”と言えば面白いのに。