故里
暖かくて、サクラが街中に。
金木犀の甘ったるい香りより、遥かに淡く、控えめ。
木犀、咲くのは10月のはずだが…。
なんで今咲いたのかしら。
木槿は、ずっと枯れたままの感じで、捨てようかなって、枝を折ってみたら、軟らかい!まだ生きてるのでは、
ずっと待っていて、
芽生えました。
これは多肉植物のなにか。
夕方、ヨガ教室。
先生がお見えになる前に、お花の水を換えたり、
先生、いつものように、静かに、音も立たずに、いらして。
上にある教室にお上がりに、まだ生徒のどなたも来ていません。
先生、すぐ降りて来たのです。
「あの、すみません」と先生は、両手を胸あたりで結び、
「はい?」とわたし。
「あの、トイレの、えっと、カレンダー、えぇ、カレンダー…」
「カレンダーが、どうかしましたか?」
「カレンダーの、3月のは、どこにありますか」
「3月の?」
明日はゴミの日、今日は31日、
なのでわたしはカレンダーの3月の1ページを、捨てました。
確かに、写真です。
湖の畔、樹木は緑、花は咲ける、とのような、春の田園風景の写真です。
「あ、明日は4月で、その3月のは、今日捨てました」
「捨てました?あ、捨てました、ですね?あ、あ」
「その3月のは、どうかしましたか?」
「ノルウェーです。わたしの、ふるさとの、です。すんでいる、隣の県です、でも、風景は、同じです。はい。あ、捨てました、はい、あ、すみません。わかりました。すみません」
「!?…」
先生は、ノルウェー人です。
ああ〜、わたし…。
あのカレンダー、頂き物で、先生、そのような想いをお持ちであれば、最初からおもらいになっても、全然よかったのに。
遠慮深く、決して人に迷惑をかけない先生ですから、そのようなことは、言えるわけがないです。
この一ヶ月、先生はよくこの3月の一枚を、眺めていたのでしょうか。