ワナ
一晩で松は、松葉の形になって。
流し台ところの窓を開けようと、黒い影が、よく見たら、蛾だわ!
あの蛾だ!間違いない。
開けたほうの窓と重ねる部分の空間にいる。
よかった〜、ありがとう、蛾!
幻覚なんかじゃないよ、あっはあ〜
狂言なんぞじゃないよ、おっほん〜
「見て見て、蛾だよ、あの蛾だから、早く来て、ほら、ほんとうにいたでしょう?早く早く」とわたしは歯ブラシが口に入れたままにもかまわずに二人を呼ぶ。
ポリーの水を換えたりしてパパはやっとこっちに来て、
「どこ?…、いないけど」
うっそ〜!
慌てて歯磨きを仕上げして、「ここよ、この間にいるの、ほら、羽の音がするでしょう?あの蛾よ、巨大な」
「だから閉めたり、開けたりしたよ、いないけど、羽の音?聞こえないけどね」
うっそー!
わたしが片方の窓を開けたり、閉めたり、蛾、いない。
うそでしょう?!どういうこと?
「だからママはヤバいよ、マジで。幻覚を見るようになったら、やばいよ」とふみはなんだか嬉しそう。
どういうこと?
この蛾、謀略家だ。
ワナを仕掛けて、わたしを落とそうとしている←こんな発言、よけいにやばい人に見えちゃうぞ。黙っていよう。
でも、どういうこと?