考えた末

雨もない、風もない、セイローの中にいるみたい。

それでも夕方お散歩して、1万歩ほど歩いて。


夜9時過ぎ、ふみはお迎えに行ったパパと一緒に塾から帰ってきて、「ね、ママ、見て見て」と、ドラゴンボールのなんとかカードを見せ、とっても嬉しそうです。

今日はふみの学校の振替休日で、お休みのパパと近所の公園でキャッチボールをして、新宿の本屋さんに行って、それから電気量販店に、ドラゴンボールのゲームのコーナーに行って、だそうです。


興奮から落ち着いてきたふみに、「ふみ、どう?考えた?」

「うん」
「で、どう?」


昨日、ふみは朝から冴えない顔。テレビを観たり、ゴロゴロしたり、いつまでも宿題をしようとしないです。

催促したほうがいいのか、しないほうがいいのか、
ゴロゴロしていたふみを眺めて、決められないわたしです。

ふみの中、なにか葛藤しているものがあるのは、気付きます。特にR校に行って、圧倒されたものもあると思います。


「ふみ、R校はどう?」
「うん、いいんじゃなぁい?」
「じゃ、入りたい?」
「う…ん、わかんない。うん、9月の学園祭を見てからかな」

「ふみ、どうしたの?、どう考えてるのか、言ってくれる?正直な話が聞きたい」

「なんかさ、うん、やめようかなって」

「やめようって、なにを?受験を?」

「うん、受験もそうだし、う…ん、勉強を」

!!「それは、ないじゃないかな。受験をやめるかどうか別にして、勉強をやめるのは、ないよ。将来なにをなるにしても、勉強すべき時、勉強しないのは、絶対許されることじゃないから」

「僕だってたいへんだよ、なのにさ、そんな簡単に言わないでよ、全然わかってくれない」

わかるよ、わかる。週に三回塾。その塾のある日は、学校から帰って来て、すぐ学校の宿題を、宿題を終わったら、間もなく塾、夕飯は塾でお弁当を食べて、塾が終わったら9時、うちに着いてお風呂に入って、それから塾の宿題。
月一回試験、それに出る偏差値…。

「たいへんよ、思う、心から思う。前々から言ってるけど、受験してもしなくても、ふみ次第、よく考えた上の決心なら、パパママはどっちでも応援するよ。ふみの決めたことだもん、応援するよ。決められないなら、例えば9月まで、塾をやめて、やっぱり続けたいなら、またやればいい、とか」

「うん、でもな、それは長いよ、もったいないよ。せっかくここまできたから、今までやった分、台無しよ。9月になったら、もう付いていけないよ」

「ママはふみが井の底の蛙になってほしくない、登って登って、たいへんでも登って、もっともっと広くて大きいな世界を見てほしい。それは今のふみには、お受験して、レベル高い教育が受けられる学校に行くのが、一番の早道よ。学校によって、受ける教育は雲泥の差だから。ふみは体力もあるし、頭だって、塾の先生が、“ふみ君は地頭がいいから”とおっしゃってるし。ま、これはママの一方的な考え、結局ふみが決めることだから、しばらく塾を休んだら」

「やっ、そんな長い時間必要ない。一晩だけ考えさせて」

「ふみ、覚えてる?5歳の時かな、水泳で、クロールがどうしてもだめで」
「ああ、覚えてる、なんか、途中やめて立ち止まっちゃうんだよね」
「そう、その時もやめたいやめたいって、でも、頑張って続けてよかったでしょう、でないと今、夏になるとプールの時間に、泳げないと憂鬱になってるよ」
気付いたら、わたしは涙がぼろぼろと。

それからふみは「ボクシングに行ってくる、ストレス発散だ」と、出ました。


一晩考えた末、やめると言ったらどうしようって、ふみは本当にもう勉強が嫌いになったのかって、いろいろ考えて、なんだか落胆して、力が抜けた感じのわたしです。



今日一日、なんとなくふみのことを心配しながら。やはり…を信じながら。



塾から帰ってきたふみに考えた結果を訊ねたら、
「うん。続けるよ。正直、塾、結構楽しいし」


受験まであと約一年半、途中、またやめたいと言い出すかもしれない。
その時も、ふみを信じることにしようかな。