風来坊です。

火曜日、Fさんがふらっと現れて、仙台の実家に帰ったと、それで、自分の20年も使ってないテナーサックスを持ってきたと、「息子さん、サックスをやってるよね、もらってくれませんか」とおっしゃるのです。

えぇ〜、テナーサックスって、そんな高価なものを、安易に頂けないわ、「それは、ちょっと、恐れが多いです」

「やっ、多くない」とFさん。

(^^)そんな日本語、ちょっとおかしいから、思わず笑ってしまって。

「や、本当です。ずっと置きっぱなしだから、楽器がかわいそう、もらってくれたらうれしいな」とFさんが。


話しを聞くと、Fさん、20年ほど前、サックスに夢中で、練習のため、千葉の小さいアパートに引っ越して、毎日江戸川の岸辺で、ずっと吹いてたって。

「息子さんのサックスは、アルトサックスでしょう。でも息子さん、でっかくなるはずの体だから、そのうち、今のサックスが物足りなくなるから、テナーサックスが欲しくなるよ」

アルト、テナー、よくわからないや。

「ヤナギサワのサックスだから、いいヤツだから、もらってくれたら、うれしいけどな」


「でも、ほんとうにいいんですか、なんだか…」


翌日、Fさんは、お暑い中、そのテナーサックスを持ってきてくださったのです。


その晩、わたしはFさんにお礼のメールを差し上げて、

Fさんよりお返事がきました。

「ふみくんが喜んでくれて嬉しく思います。20年間押し入れの中でじっとしていた楽器で、僕には使いこなせなかっものなのですから、
ふみくんがいつか楽しんで吹いてくれたら、あの楽器が一番嬉しいんじゃないかと思います。
ふみくんはまだ小学生だけど、大人と同じ様に色々な問題があって悩みもあるんだろうと思いますが、ふみくんが日々健やかである事を願います。

12月にまた東京に戻ります。その時お会いできれば嬉しいです。
さっき難波から南海に乗りました。
大阪はとても暑かったんですけど、高野山はきっと涼しいんだろうと思います。
では、また、お元気で
楽器を貰ってくれて、僕は嬉しかったです。ありがとうございます。」


と。


ひゃ〜、Fさん、“そうっすよ”とか、“それはねぇよ”とか、との言い方ばかりで、まさかこんな堅気の文を書けるとは。
おみそれしました。
それと、失礼いたしました。


風来坊のFさん、風来坊の暮らしをやめて、地道な暮らしを始めることを、祈っております。





木槿、咲いたり、散ったり。

今日は、久しぶりにふみとサックスのレッスンに行きました。

先生に、テナーサックスのことをお伺いしたかったのです。

ヤナギサワのテナーサックスと聞いて、先生、びっくりしたご様子でした。
「いいものですよ、何十万はするよ、使える使える、ふみくん、大きくなるはずだから、その時切り換えたらちょうどいいよ、アルトとテナー、基本は同じだから、使う前に、メンテナンスに出さないといけないけど、でももらってよかった、テナーサックス、大きくてかっこいいよ」
と先生が。
「ところで、テナーサックスをくれる人って、なにをやってる人?ミュージシャン?」
「いいえ、風来坊です」
「ふっ、風来坊?!ハハハハ、風来坊か〜、いいね、ハハハ」、
考えたら、今の時代、もう風来坊なんて、辞書にあるだけの言葉に過ぎないでしょうね。
先生はサックスを組立てながら「で、なにをしてる人?」

すると、ふみが真面目な顔で、ちょっと自慢も見えて「あ、野宿したりしてます」
ちょっと!

先生のサックスを組み立てる手が止まって、「ノジュク?」とわたしを見ます、驚いた表情で、

「違います違います。常に野宿ではないです。あの、以前、京都に行ったり、西国札所巡りなどのとき、野宿してましたけど、普段はずっと野宿じゃないです」

「あ、そう〜、野宿は、すごいね」

これはいけない、Fさん、決してホームレスとかではないですから、
わたしはスマホのアルバムから、Fさんの写真を探しながら、「あの、いろんな職業をなさる方で、今は高野山にいますけど、料理人だったり、工事現場で働いたり、塾の先生も。あ、この方です」

画面に、Fさんとふみ、並んで、微笑んでいます。

先生が写真を見ながら、「へぇ〜、ふみくん、お友達なんだ」

「あ、はい」とふみも画面を覗いて、「Fさん、こんな眉太かったっけ?」と、やはりちょっと自慢な感じです。



しかしふみ、サックス、だいぶ上手になりましたね。ひさしぶりに見たら、感心しました。


Tくんと一緒に出てきて、
「ね、Tくん、この前見せてくれたウズラ、名前はなんて言うの?」
「あれ?あれは、ズちゃん、前ね、ウちゃんもいてね、死んだの」とTくんが。
「え?死んだ?君のことだから、生き物は死なせないで育てるかと思った」とふみが。
「それはないよ、なにしろうちはエアコンが壊れたままだから、ハハハ」

「ね、Tくん、Tくんの夢はなに?」とわたし、
「え?夢…、う…ん、今のところ、ないな」
「え〜〜、すっかり昆虫博士とか、思いましたよ、ご兄弟は?みんな生き物が好き?」
「姉さんがね、好きだけど、トンボとムカデがダメ、気絶するらしい」
「とんぼとムカデ、ずいぶん外見が違うのにね」

百円ショップの前で、ふみが刀を買いたいと。
「Tくんもどう?」
「え?あ、や、やっぱりいいよ、帰ったらまた怒られるよ、“どうせあなたが欲しい欲しいって言ったんだろう”とか、“欲しそうな顔したからよ”とか、ゴタゴタ言われるの、面倒だから」

面白い子ね、Tくんって。

歩いてる間、20代の男子グループとすれ違って、そういえばこの何日か、よくこんなグループと出会い、男子たち、なにかを見つけて、カメラを構えて、歓声を揚げてました。たまに似た雰囲気の女子グループも。


何かしらねと言ったら、Tくんが、この辺、あるアニメ映画の名所になってる、ファンたちは聖地巡礼をしてると教えてくれました。

ま〜〜


ふみとTくん、神社の境内でしばらく遊んでました。

待っているわたし、蚊にいっぱい刺されました。

日が暮れるの早くなりましたね。

西の空です。まるで火の鳥が飛んでいる!