仲秋の候

木槿に、アブラムシのようなのが付いてて、さっそくネットから殺虫剤を注文して、スプレーをしたら、治りました。
こうして、木槿はまた美しく開いてます。


夕方、ふみが塾に出掛けたあと、同じ階の奥のうちに、首に名札を下げてる区の職員さんが二人来て、インターホンなど押したり、電話をしたり、

その間もなく、警察の鑑識が二人来て、鍵業者の方も来て。
上の鍵、下の鍵、チエーン、結構時間をかけて開ける作業を。

その間、鑑識二人は、溜まった新聞を廊下の床にきれいに並べて、写真を撮る。

ドアが開きました。

区の職員二人は、「では、これで帰ります」

鑑識二人は静かに靴にビニールカバーをして、中に入る。
鑑識二人は終始静かでした。

鍵を開ける作業の間、区の職員が住民と話したり、鍵屋さんと話したりでしたが、鑑識は、ほぼ無言でした。

帰ろうとする区の職員に、鍵屋さんが「お帰りになるんですか?」
「私たちは本人と面識がないですから、居ても意味がないですよ」
「あそうですか。最後、また鍵しないといけないかもしれないから、ぼくはまだいますよ」

警官も来て、鑑識さらに何人か来て、みんな静かで、あ・うんの呼吸で作業を進めています。
外も警官が立って、無線で話しています。

どれぐらい時間が経ったのでしょうか、あっという間のような、長いような、
一人鑑識が上がって来て、「ストレッチャーは下まで来てる、軽い女性でしょう?あれで行こうか」

9時半頃、銀色の分厚いビニールのくるみが、4人の警官と鑑識で下へ運ばれました。

そのすぐ後、塾にお迎えに行ってたパパとふみが帰って来ました。

ちょうど下の玄関で会ったそうです。
パパは両手にふみ荷物などでいっぱいで、どうにもならなくて、
ふみは立ち止まって、銀色のくるみに向かって、両手を合わせたそうです。

「お顔は見られました?」とわたしはふみに聞いたら、
「ううん、くるんでるから。それでも結構匂ってたもん」
「そう〜、ふみ、その奥のおうちのお婆ちゃん、知ってる?」
「うん。かわいそうだったね」

孤独死

新聞は一週間も溜まってあって、新聞屋さんが通報したらしいです。

よくピンク色をお召しになる、小柄のお婆ちゃんでした。
冬のダウンコートもピンク、夏のブラウスもピンク、一人暮らしの、いつもにこやかな、お元気そうなお婆ちゃんでした。

お会いする都度、話しかけてくださるのです。
「素敵だわ〜、今、着物を着る方って、少ないもの、やっぱり着物はいいね〜」
「お暑うございますね〜」
「いいわね〜、お母さんと仲良くおでかけ?いいわね〜」

同じ階ですけど、わたし、お婆ちゃんのお名前も存じておりません。
おそらく向こうも同じくです。

5日月曜日の早朝4時頃、夢を見ました。
目の前に、ストレッチャー二台が、水色服の人を運んで、わたしはそれを見ていて、「どうしたの?」と隣の人に聞く、
「調べなくちゃいけないけど、でも、もうフハイし始めてるから、先に運ばないと」
それでわたしは目覚めて、あまりリアルで、目覚めても、なかなか眠れなかったのです。

その日、仕事先でKさんにその話しをして、Kさんも「ずいぶんリアルですね、なんか、ちょっと気持ちわるいね」

新聞は4日のから溜めていたそうです。


「ふみ、立派でしたね、手を合わせてもらってお婆ちゃん、うれしかったと思うよ」
「うん」


残暑が過ぎ、中秋の明月の三日前でした。