五徳
朝起きて、3人でおせちを頂き、
パパは8時すぎにうちを出て、今日はお仕事です。
寝正月にしたい気持ちは本音ですが、そうも行かないわ。
ふみにお詣りに行くことを誘います、嫌がるふみです。
もうテレビが面白くて。
またお笑いを見ているのかと思ったら、ニューイヤーマラソンでした。
マラソンって、ただただ走ってるだけじゃないの、
「やややや、面白いって。ほらこの服部××、弟が箱根駅伝に出てるの、服部××、すごいね兄弟で、…」
お詣りに行きましょう、ふみの酉年よ、
しぶしぶと応じてはいるものの、文句の多いこと。
「顔は夕べ洗ったじゃん、めんどくさい」
「なに言ってるの!」
「なんでマフラー?要らないよ」
「えりから肌着がちょっと見えるから、このえり広いのじゃなくて、別のに着替えればいいけど」
「めんどくさい、なんで肌着が見えたらだめなの?少しだけじゃん」
「多い少ないとの問題じゃないの、失礼になるから」
「ぼくが気にしないからそれでいいじゃん」
「相手によ相手、相手に対して失礼になるから、ましてやお詣りは相手が神様よ、そんなちらほら肌着が見えるなんて、とんでもないこと」
「なんてうちだけこんな厳しいの?ぼくの友達こういうことを言う家って、ないよ!めんどくさい!」
「あなたの友達の基準はわからないけど、一般常識の話しをしてるの、これはママのこだわりなんかじゃないよ、あくまでも、一般常識、一般的の礼儀」
………。
約一時間のやりとり、もう、嫌だ!お正月早々、なんてこんなことで一時間も。
「はいはい、わかった、マフラーすればいいでしょうマフラーを」
「なにその態度は、納得していないなら、いくらでも最初から説明します!」
「納得しましたぁ。わかりましたぁ。ぼくの考えが足りなかったぁ、いいでしょうもう」
お詣りに行きました。
大行列に並び、お詣りして、ふみは「大吉」のおみくじをひいて、
甘酒にしたかったのに、細かいお金がもうなくなり、あきらめました。杏飴なんかするからよ。
徒歩の帰り道、杏飴の飴の糸が、ふみのダウンコートの袖口にくっついてるのを見て、午前のことを思い出して、また腹が立ってきました。
一人で信号を渡って、ふみと別れました。
ふみはわたしを見て、あきらめたようで、速足で歩き出しました。
どこかでママを待ってるんじゃないかって、見ながら、速足ができないわたしです。
途中、全身金色タイツ、頭に金色大仏様のかぶりもの姿の男性が現れ、手にパソコンを持ち、パソコンにはカメラが設置されて、歩きながら、中継をしています。
ちょっと異様ですから、ふみ、じろじろ見てなかったんだろうね、笑ったりしてなかったんだろうね、と案じて、
ま、あの子、そういうことはわりと気を付けてるほうだわ。
一時的、その人とほぼ肩並べて歩いて、かぶりもの通しての鈍い声で「救急車、今、救急車が通った、なんだろ」と、目にしたものを中継。
さりげないが、極力顔を斜めにして、カメラに写らないことを努めるわたし。
大きいな金色姿、わたしを越えて、歩いて行きました。
ふみは鍵を持っていない、わたしを探しに来るのかと期待しましたけど、いませんでした。
うちに着いて、ふみ、ドアの前に立っていました。
「年賀状、ぼくにも何枚か来てる、出さないとな、あ、前の生け花のところ、覚えて?そこからもぼく宛の来てるよ」
ふみ、何事もなかったようでした。
夜、三人で「相棒」を観ました。リアルタイムで見るのは、ふみ、初めてかな、二回目?
今日の産経抄です。