電話

朝8時すぎ、近くの総合クリニックの小児科へ、ふみの予防接種の予約です。

小さい時にした混合の1期、11歳になってから、その2期の知らせが区から来たのです。

受付して、その足でお仕事へ。

午後3時、ふみと小児科前で待ち合わせして、朝の予約のおかげで、待たずに済みました。


右腕を出して、看護師さんが「ほら、これだけよ」とふみに注射器を見せ、「これぐらいしかないの、ね?赤ちゃんなんてさ、もうこ〜んな量注射したりするのよ、だからね、全然だいじょうぶだよ…」

「えっ?ぼく?ぼくは全然だいじょうぶだけど」

「あらそう、それは失礼しました」

「ずっとなんの話しをしてるのかと思ったよ、ぼくは注射は平気だから」

先生も笑いました。

注射を受けてから30分、もう一回様子を見せるようにと言われて、30分も病院には座りたくないから、ふみと下のコンビニに座ることにしました。

「今日、またトラブって」
「トラブって、という言葉はないからね、トラブルがあって」
「またS君、もう本当にしょうがないから、あいつ」と、ふみはわたしの言葉への注意をまったく気にせず。

話しを聞くと、
今日の給食はカレーで、ふみはカレーをお代わりして、その後、S君がお代わりに来て、S君、給食専用のおたまを使うのではなく、自分使ってるスプーンでカレーを掬い、ご飯を掬い、しかも、ご飯が多いと、また自分のお皿からご飯を給食お盆に戻したというのです。

ふみが「なにしてるの?みんなの給食だよ、自分のスプーンで不衛生だよ、勝手にご飯を戻さないで」
S君すぐ怒って、「なにがわるい!」と大きい声で、
ふみも「あやまってよ」って譲らない。

結局担任の先生がふみに「いいから、S君、別にそんなに許せないことをやったわけじゃないから」と言ったそうです。

ふみ、思い出してもまだ不服の様子。

またS君ですか。時々自分をコントロールできない子で、トラブルが多い、興奮したら、なかなか誰も押さえられないです。

「ふみ、先生がそうおっしゃるのは、それなりの理由があるから。大人になったら、ふみは理解ができるようになると思う。全てのことが正論で解決できるのかと言うと、そうでもない、仕方ないことがいっぱいあるんだからね、S君に関して、ほんとにお願い、距離を取ること。それはふみはすでにそうしてるってわかるよ、あとは、とにかくSくんのやること、一切口を出さないでくれる?先生に任せて、お願いだから、ママと約束して」

「気持悪いんだよ、自分のスプーンで、みんなカレーの中入れたりして、あとの人どうやって食べんのよ、なんで先生はそれが悪くないっていうの?」

「ふみが気持ち悪いと思ったら、ふみは食べなきゃいいのよ、ガマンして、夜ママはうんと美味しいカレーを作ってあげるから」
「だから僕はもうお代わりした後なの!ぼくには直接関係ないけど。だからって」
「Sくんに関しては、ほんとうにママからのお願い」

かろうじて、ふみはわたしと約束をしてくれました。

最後の一年、何事もないように、願うばかりです。


30分経って、再び小児科に、腕を見せ、だいじょうぶだと言われて、ふみは塾の自習室へ、わたしは洗剤などのお買い物があって、ふみと途中まで。


「あっ」とふみが。
見て見たら、向こうから3人の女子が歩いて来て、中の一人も「あっ」と、ちょっと笑顔を見せ、すれ違いました。

「同じクラス?全然見たことない顔ね」
「塾が同じ。中一だよ。×中の。なんか、難関校を目指して、落ちて、偏差値50いくつの学校には入ったけど、放棄して、公立に入って、高校受験でもう一回その難関校を目指すって。だから中学に入ってからすぐ塾、勉強はすごいよ、中間テストなんか、学年の一位だよ」

「へぇ〜、優秀ね。でも、なんでふみとお友達なの?」

「ぼく、けっこう中学生の友達いるよ。あ、今日、新聞社に電話したから。発表はいつかって聞いた」。
ふみは、購読してる小学生新聞の、釣りのなんとかゲームの無料応募をして、待てど暮らせど、うんともすんともなく。

「え?電話したの?いつ?どうやって?」わたしはびっくり。

「今日。編集部の電話が新聞に書いてたから」

「で?」

「発表は来週だって、当たるといいな、いや、絶対当たるよ」

ひぇ〜〜、勝手に電話をなんて。

「×ぴーは優しいな、やっぱり」とふみが。
×ぴーとは、ふみが保育園からの同級生。ちょっと病弱な男の子、よく休んだりして。「Sくんと口論してるとき、×ぴーが来て、“ふみくん、もうお怒らないで、もう怒らないでね”って言って、それでぼくもちょっと冷静になった。優しいな、いつも、×ぴーは」