シュークリームと缶コーヒー
百合の香りは、それほどではないですが。
午後、保護者会のため、学校へ向かいました。
学校近くになって、下校する子供たちとすれ違って、みんな気持ちよく挨拶してくれました。「ふみくんのお母さん、こんにちは」
5、6人が歩いて来ました。
「こんにちは」「こんにちは」
2、3人振り向いて、「ふみくん、ふみくん」
ふみ、一番後ろでだらだらと歩いて、本を読みながら。
「ふみ、歩きながら本を読むのダメよ」と言ったら、
「え?」とふみは、やっと顔を上げて「あ、バイバイ」
昨日、副校長先生がまた授業を潰して、今度は、いじめ問題です。
クラスで、みんなSくんを仲間はずれにしています。
と。
副校長先生が「いじめがあります。名指ししないほうがいいですよね。名指ししないほうがいいと思う人手を挙げて」
大半の生徒は手を挙げて、ワケわかってない生徒もいて、
中で、ふみだけ、「名指ししてください。両側の名指しをしてください」と言ったそうです。
よくキレるSくんは、みんなから避けられ、それでSくんは、集団に仲間はずれされる、いじめ受けてる、かわいそうな子だと、なっているようです。
生徒たちから反発されて、担任の先生も、生徒からいじめられてる、かわいそうな先生となっているようです。
なので、今日は、クラスの保護者会なのに、校長先生と副校長が真っ先に入ってきました。
へんな空気が流れる中、なにも発言しないと決めたわたしは、どなたの顔も見ず、ずっと机を見つめて聞いてました。
校長先生は、このクラス、担任に対しての態度が悪い、言葉失礼、
いじめもある、ある特定の子に、みんな仲間はずれしている、あってはならないことだ。
5年生は残りあと一ヶ月、この一ヶ月、なんとか改善したい。
というような発言をなさって。
副校長先生も同じような発言をなさって、
「私が話したあと、子供たち、変わった(希望が見えたような笑顔)、今日なんか、卒業式の練習に、私、“あ、5年生は今荒れてるから、歌わないんじゃない?”って思いました。普通、荒れてるクラスは歌を歌わないですよ、けど、5年生、歌った!子供たち、一生懸命歌ったんですよ、だから、大丈夫…」
失礼ながら、わたし、あわや吹き出しそうになりました。
副校長先生は、担任のK先生が相当参って、相当悩んで、とおっしゃって、
そして、担任のK先生、声を震わせながら、涙を堪えて、発言をなさって。
思ったより早く、お母さんたち、すぐ反応して、反論が多かったです。
我が子から聞いたK先生の発言を言ったり、子供たちが一方的に悪いのではないと、訴えました。
や〜、話しを聞いていて、ますます担任の先生が悪いというより、やはり無能だと、思いました。
Kさんが、
娘が、勇気だして、いけないことをした子のこと担任先生に言ったら、
「だからなに」と担任先生が言ったと。
Sさんが、娘はカンニングの子を「先生、カンニングしてます」と言ったら、担任先生、カンニングする子を叱らず、Sさんの娘に「あなたがなんでわかったの?あなたがよそ見してるからじゃないの」と。
お母さんの発言の中、「副校長先生が、子供たちは歌ったっておっしゃいましたけど、だからって、なにか変化したとか、私は思えないですけど」と。
昔、青春ドラマのファンだったのかしらね。副校長先生は。
そう思いながら、わたしは机を見つめて続けてます。
何人のお母さんが、“いじめられてる”とされてるSくんの、数々の嫌なことを証言してました。
例えば、給食並んでるとき、Sくん、鼻くそだして、みんなギャーと逃げて、
担任先生は、騒ぐ子を叱る、Sくんを叱らない。
で、今日、担任先生のそれに対する弁解は、みんなの前でSくんを叱るなら、Sくん、傷つくから、だから、みんないないところでSくんを叱った、みんな、知らないだけ。
と。
ありゃ〜、
こんな話し、筋道通りますかしら。
なら、ほかの子をみんなの前で叱るのも、ダメなんじゃないかしら。
Sくん、とにかくトラブルが多くて、よくキレる、よく泣く、よく暴れる、ふみも、たびたび被害を受けていました。
しかし、学校側は、どういう調査したのか。
一方的に、みんなSくんを仲間はずれして、集団いじめ問題だと判定しているのかしら。
高圧的に、所謂“仲間はずれ”さえしなくなったら、もう丸くおさまる、というお考えかしら。
一人のお母さんが、「学校側は100%Sくんの味方だと、うちの子が、校長先生がおっしゃってると言ってますけど、それは本当でしょうか」
校長先生は、「そうです。学校の方針は基本的に、いじめられる側の味方します。100%」
そのとき思い出しました。
副校長先生が話しに来たとき、
ふみが副校長先生に「仲間はずれと言うけど、理由があるんです、その前になにがあったのか、なんで聞かないんですか」
副校長がふみに、「聞く必要ない、いじめは理由なんかない」と。
一切聞かないんだって。
Kさんが「残り一ヶ月だけで、信頼関係を取り戻されるとは、私は思えないです」と。
膠着状態。
このまま黙っても、なにもならないと思って、わたしは「よろしいですか」と発言しました。
「 昨日、副校長先生がいらっしゃったとき、いじめの名指しをしないほうがいいとおっしゃって、ふみはそのとき、“名指ししてください”と言ったそうですね?
それを聞いてわたしはふみに“なんで名指ししてくださいって言ったの?”と聞いたら、
ふみは、“ぼくはいじめる側になってますから。だから名指ししてほしかった、訳を聞いてほしかった、ぼくはいじめなんてしてない、絶対納得できない、悪いことしてないから、名指しで言ってもらたい”と言いました。
その子(全員終始“その子”と言ってる)は、学童のときも一緒でした。学童のときも、ふみは籠を投げられたり、とにかくキレるとたいへん、トラブルも何回もありました。5年生になって、やはりトラブルが何回もありました。
ふみは席に戻ったときに、友達が、“ふみくん、今、教科書に鼻くそ塗られたよ”とか、そういうことはありました。
ふみは本人に、やめるようにと何回も話しました。
なにも変わらないので、何回も先生に訴えました。
やはりなにも変わらないです。
その子を避けるように、というのは、わたしからのアドバイスでした。わたしが言ったんです。
もちろん最初わたしは正論を言いました、お友達だから、仲よく努力しないと、とか。けど、それはなにも解決しないことに気付きました。
40人もいれば、全員と仲よくするのも無理な話です。
なのでわたしは、“ふみ、仲よくできないのなら、避けたらどう?距離を取ったらどう?”、大人の世界も同じです。どうしても合わない、どうしても苦手な相手なら、無理して付き合う必要ないと思いました。避ければいいと思いました。
それがいじめ問題、仲間はずれ問題になるのは、心外で、不本意です。
ふみは今、どれが正しい、どれが間違い、混乱しているかもしれません。
わたしは、正直に申しますと、もう諦めてます。あと一年だけですから、波風立てず、なんとか過ごせばいいじゃないとふみを説得しましたけど、
でもあの子の性格は、わたしと違って、かならず白黒つけないと収まらないと言いますか、納得いかないことは、納得いかないです。と言うわけで、ふみは、納得していません。自分はいじめなんて、認められないですし、納得しないです。
けれど、話しを聞いてもらえないことに、とても悔しがってます。
校長先生がこの学校にお戻りになるとき、体育館で話しをなさって、わたし、今でも覚えてます、“小さいとき正しいと思うことは、大人になっても、それは正しいです”」
話しながら、わたしは胃がじわじわと痛くなってきました。
校長先生が、「……、うん、そうですね、子供たちは、話しを聞いて貰いたいですね、うん、これから、私のほうから、子供たちと個別で話しをします」
するとすぐお母さんが、「全員じゃないですね?なら、その選別は、どういう基準でしょうか?」
ひぁ〜、強い❗
校長先生が「えーっと、ま、納得してないだろうなこの子は、と見える子…」
すると別のお母さん「すみませんが、うちの子、なんでも顔に出さないタイプなんです、どうしたらいいんでしょうか。」
ひゃ〜
副校長先生がわたしに「決して諦めないでください」
やはり、青春ドラマの感じでした。
保護者会が終わったあとの茶話会は、わたしは参加せず、出てきました。
Tさんが追っ掛けてきて「×さん、お帰りなるの?なら、シュークリームと缶コーヒーをお持ちください。あとは、ふみくん、正しいよ、そう思います」と。
シュークリームと缶コーヒーを持って、帰路を歩くわたしは、胃が激痛、穴が開いたんじゃないかな、とすら思いました。
しかしふみって、本当にはっきりした性格だわ。
「名指ししてください」なんて、強いなぁと思いました。
さすが刑事を憧れとしてますこと。
夕方、塾にいるふみから電話、
塾に行く途中、下級生と会って、公園でちょっと喋って、それで、持っているお弁当の手提げを、公園に置きっぱなしした、と。
(*_*)
やはり直火で炊いたご飯は美味しいわ。