かつての憧れ

ふみは昼から塾がありまして、
お昼を済ましたら出かけるのです。


ご飯をいただきながら、ふみは急に「この頃さぁ、寅さんとかさ、Fさんとかさ、みたいな人生には、なっちゃダメだなって、思うようになった」ってしみじみと語って。


へぇ〜、
つい少し前まで、寅さんのことを「いいな〜、あんなふうに暮らしたいよ」と、
Fさんのことをもっと、「野宿ができるんだよ」と自慢げに、誇らしげに語ったり。


どうしたのでしょう。


「そう〜、Fさん、自由に生きていて、ママは羨ましいと思うよ」


「大体さ、ママの知人って、社会不適合者が多いよね。ま、ママもちょっと社会不適合だからね」


「なんで⁈」

「だって、人との付き合いが苦手でしょう?学校のお母さんととかさ。集まりにも参加したがらないし、社会不適合よ」

「ママも、ママの知人の方も、個性的よ個性的。社会不適合ではない」

Fさん、いい方じゃないの、裏表がなくて、伝説小説を読んでいるみたいな感じの方で。


東京にお戻りになって、ご自分のお店をやらないのかしら。そうしたらたまに顔だしに参ります。


ふみ、やはり、堅いですよ、少々。性格が。



明日、七草粥の日でございますね。
「明日、ぼく、一口しか食べないからね」とふみはそう言って、塾へ向かいました。