春雷

今日から4月、ふみが一つ上のすみれ組に上がるのです。

今までの通園カバンは使わなくなり、代わりにふみが自分でリュックをしょって、中に連絡ノートやコップや着替えを入れて持って行くことになります。


朝、ふみはササッとリュックをしょって、楽しそうに出かけました。


ずっと手を繋いでいたが、急に走り出して、ここの植物たちに向かって、音楽の指揮者のマネをし始めました。



たまにしか見ないテレビに、コンサートの指揮者が出てくると、ふみはいつもマネしてしまいます。



保育園に着くと、園長先生と新転入の副園長先生が玄関に立って、入ってくる子供の一人一人に対して、「おはようございます。××組、おめでとうございます」と声をかけてくれています。


玄関の靴の置場も変わりましたし、部屋もずっと奥のほうになりました。
これから帰る時の仕度は、子供たちに自分でやってもらうことになるそうです。


すみれ組からは、室内履き用の靴も必要になります。
一応用意はしましたが、でも、ふみは履かないだろうなって、ほぼ確信してます。

靴も靴下も平気な子もいるんでしょうけど、ふみは極端に裸足になりたがるほうです。


ついこの前に蕎麦屋で、お店の奥の席が開いたから、入口の席からそっちに移動しようとふみに言ったら、すでに素早く靴も靴下を脱いだふみは、手に靴を持って、裸足のまま店内歩いてきました。

しょうがないなと思う同時に、わたし自身もそうだなって、苦笑してしまいました。
小さい時はもちろん、今でも、靴を履かないのはいくらなんでも無理だから、家ではできるだけ靴下を履かないです(冷え症のくせに)。
なんだか束縛されると感じてならないのですから。


父親は、そういうわたしを、「赤脚大仙」(裸足仙人?)と名付けてくれました。悪くないと思って、黙認したんです。
ふみは「赤脚大仙二世」かな。




ふみとバイバイして、出てきた。
今日はわたしのお休みで、10時からの映画を見に、急がなくちゃ。


新宿に向かって、地下鉄が速いに決まっているけど、やはり歩くことにした。
雨が上がったばかりで、浅い霧が漂ってる感じの街を、早足に、たまに小走りに。


あ、きれい、花びらの水珠はまだ乾いてない。



この二丁目の花屋さんには、いろんなお花がいつも置いてある。時々結構珍しいのも。
こちらは「クレマチス」という。



わたしの大好きなアジサイ

でもアジサイは、やっぱり梅雨にだけ咲いてほしいね。無理して咲かせなくても。



映画館に辿り着いたら、すでに長い行列ができてる。
水曜日は女性が千円だから、女性は結構多いが、子供も、男性の方も。
ドラえもんのなんとかの映画は、9時半の上演のはすでに満席と表示された。

わたしの観たい映画は、また空きがあったようで安心した。


わたしの観たい映画は、「花の生涯 梅蘭芳」。中国映画。
覇王別姫」の監督の作品ですから、期待していた。


この映画は、千円どころか、普通の1800円でもなく、2000円です。
特別上演ということで、東京ではここしかやっていないそうです。



映画は、なかなかよかった。久しぶりに大作を観た感じ。
やっぱり中国映画の製作は、厳密性が全然違うね。
1920、30年代の雰囲気をそこまで出しているのが、とても感心した。

最近の日本のドラマや映画は、昭和時代すら、すでにうまく再現できなくなっている。
小津映画をたくさん見てから、昭和時代を題材とした今の映画やドラマの杜撰さに言葉がでない。


脇役にもとても感心したね。
一人一人個性があって、くせがありすぎて、演技がうますぎで、梅蘭芳の中年以降を演じた香港のスターの存在が薄く映って、ちょっとかわいそうだった。


中国では、香港や日本みたいに、タレントか歌手がそのまま俳優になることは稀である。
北京電影学院」と「中央戯劇学院」の二つの映画大学卒業でないと、実力のある映画スターにはなれないです。
4年制の大学で、表演学部(俳優になる)や撮影学部、監督学部などがあって、映画についてのクラシックの理論や実践、俳優になるのなら、歌や踊りなども訓練しなければならない。卒業する時はちゃんと論文をだす。


こうやって実力俳優が生まれる。
中国映画は世界の数々の賞を受賞してる。


いつだったか、まだ従兄が日本にいる時、李香蘭を描くドラマが放送されるから見てねと、わたしは従兄に伝えた。

けど従兄は、李香蘭の役はあるアイドルがやると聞いて憤慨していた。
ドラマは、案の定、薄っぺらなものでした。楽しめたのは華麗なチャイナドレスだけだった。


日本でも映画大学を作れないのかしらね。
まあ、関係ない話だけどね。

今晩、激しい雷雨だった。