しょの3
電車の中で一時間あまり眠ってしまったふみは、目覚めた途端、コロンと起き上がって、
「どういうこと?!さっき駅弁、食べたのに?」と。
それから惜しむように車窓から外の景色をじーっと眺めてました。
水上、山があって、川があって、なかなかきれいなところで、ちょっとびっくりしました。
標高5百メートル近い山だから寒いのかなと思ったら、東京よりむしむししています。
そういえば、天気予報を見ていますと、夏の群馬あたりは、いつも東京より気温が高いですね。
宿も、きれいです。
入り口ところの魚にすぐ目を奪われるふみ。
女中さんの話では、昨日、おさるさんが中庭まで訪れてたとか。
うぎぎぎ―
宿の中庭は広くて、小さな川が流れて、お花も咲いてて、なんだか、今まで行ってる温泉宿の中で、一番洒落てる気がします。
あれは伊東の謀宿ですね、古びた建物、廃墟のような雰囲気が充満して、錆びている豪華そうなプール、かつてのにぎやかさだけを物語っている。
バブル時期、よかったんでしょうね。
あの宿は、二度と行きたくない宿ですね、しばらく落ち込んでしまいますから。
露天風呂に入ってきました。
これもまた気に入った。
もみじやツツジ、アジサイ(こちらの開花はこれからの感じ)、ツバメや、名前の知らない鳥さんたち飛び回って、鳴いて、遠くには緑の山……。
部屋に戻って、浴衣のふみが、窓から見えた。
長い枝を持って、広い中庭を下駄履いて、堂々と歩いてる。
窓を開けて、「ふみ〜」と呼んだら、後ろを歩くパパに聞こえた。
ふみに教えたみたいで、ふみはこっちに向かって、「ヤッホー」と叫んで、また歩き出した。
早く戻ればいいのに、蚊もいそうだし、茂みに行ったら、こっちからは見えないし、わりと激流の川は危ないし、あの水路の手入れをしているおじさんは怪しいし(これはサスペンス見過ぎ)、
あ、パパと手を繋いで歩いてるふみが、また視野に入った!
これは帰り道だね。
帰ってきたパパとふみは、こんな生き物たちと出会ったと、写真を見せてくれました。