Sちゃんが泣くよ
何日か前に、朝の登園道で、ふみの憧れのSちゃんとSちゃんのパパに会いました。
Sちゃんの明るい挨拶に対して、ふみはちょっと照れてました。
女の子と比べると、男の子はやっぱり不器用ですね。
Sちゃんはわたしにいろいろと話をかけてくれて、ふみとSちゃんのパパは黙って歩いてるだけ。
「Sちゃん、Sちゃんはお野菜が食べられる?」とわたしが聞くと、
Sちゃんは「うん!食べられるよ。お野菜でしょう、トマトでしょう、Sちゃん、ニンジンさんも食べられるの」と。
「ふみ君は?」と、Sちゃんのパパこの時初めて口を開いたのです。
「この子は野菜全般ダメなんですよ」とわたしが。
「え?そうなんですか?」とSちゃんのパパが。
「ふみ君、どうしてお野菜食べないの?背が伸びなくなるよ」と、Sちゃんは立ち止まって、ふみの頭をなでました。
Sちゃんと、もう一人女の子が、ふみの組の身長のトップです。ふみよりは5センチぐらい高い。
Sちゃんに頭をなでられたふみは、うれしいだろうなと思いきや、ふみは立ち止まったまま、笑顔が少々凍っているのでは。
ふみのプライドがちょっと傷つけられたのかしら。
でも、あっという間、ふみは機嫌が直って、Sちゃんとアハハハと笑い始まった。
「あ、バイクがきたぁ」
はははは
「あ、またきたぁ」
あはははは
「あ、もう一台きたぁ、おかしいね」
「おかしいね」
あははははは
いつまでも笑ってました。
その日の連絡帳に、「ふみ君は、お味噌汁の中のホウレンソウとニンジンを少しずつ食べました!」と書いてありました。
あらま、親がいくら言っても、Sちゃんの一言に叶わないってことか(^J^)
ふみは、DHCの野菜サプリメントを、昨日からまじめに飲んでいます。
いつかは、本物の野菜を食べられるよね、ふみ。
今日は、洗濯物を畳んでいるわたしのところに、ふみが来て、
「ね、見てぇ〜かっちょいいでしょう」と、足をのばして見せてくれた。
あら〜ウルトラマンか、なんとかレンジャーとかでいっぱいだね。
ふみのリュックを洗おうとしたら、どうも中に何か小さいものがある。暗い中、考えもせずそれを取り出した。
途中、手の感触すでにあやしく思い、目の前に持って見てみたら、
緑の光が…、コガネムシではないか!!
「ふみ〜〜〜」
「なに?」
「なんでふみのリュックにコガネムシがいるのよ」
「Sちゃんがくれたんだよ」
「え?いつ?」
「う…ん、保育園にいる時だよ」
「ちょっと、言ってよ、びっくりするじゃない!ママは死にそうだったよ」
ふみは笑う。
「ね、ふみ、これ捨てて」
「ママ自分でやって」
「ママはイヤだよ、ふみが捨てて」
ふみはそのコガネムシをつかんで、ベランダから落とした。
「なんでSちゃんは、ふみにムシなんかくれるの?」
「しぃらない。ふみ君にあげるって言ったから」
「で、ふみはなに言った?」
「わかったって言った。ねママ、ムシを捨てたとSちゃんが知ってたら、泣くよSちゃんは」
「なんで?」
「Sちゃんの大事なムシだよ」
「教えなきゃいいじゃん。ね?ふみ、Sちゃんに言わないでね」
「…」
あ〜〜小さい時、わたしだって、どんなムシも触ったりつかんだりしてたのにね。
今日は、ラブちゃんに会いに行った。
ラブちゃんは、遠くからわたしたちを見かけると、もうパタンと横になって、頭やお腹を撫でてくれるのを待っていた。しっぽだけ右左と愉快に振っている