洋館好き
以前は洋館巡りに凝った時期があったが、ふみが生まれて、なかなかできなくなった。
ふみは今だいぶ大きくなったから、また洋館巡りしようかなって考えたりして。
今日は旧古河庭園に行くことにした。
この時期は園内いっぱいのバラが満開で、人も多い。
設計者は英国人ジョサイア・コンドル博士。
博士は当園以外にも、旧岩崎邸庭園洋館、鹿鳴館、ニコライ堂などを設計したそうで。
旧岩崎邸庭園は何回か行った。岩崎邸は、中でも撮影できるのがいい。
この旧古河邸は申し込めば中に入れるんだけど、撮影は禁止されてる。
それを拾う人もいた。栃の実とか言って。食べれるのかしら。
今度、バラの時期が過ぎてから、また行こう。そしたら人はあまり多くないと思う。
定年してからの趣味として、三脚まで持って、大きいカメラを構える年配の方が、いろんな観光地に、たくさん出没する。
通路に立って、一輪のお花を永遠に撮り、通りかかる人に対し、いかにも迷惑そうな顔をする。
だからでしょうか、「三脚はご遠慮ください」の看板を、最近よくみかける。
最近、ふみにカメラを持たせたりしている。
これで一緒に出かける時、ふみのばかりではなく、わたしの姿も残される。
ふみの記念すべき初カメラマンの写真は、わたしの携帯で撮ったもの。
雨の日、傘をさしてるわたし。
それまで雨の日の写真、記憶にないわ。
携帯より、カメラのほうが安定してるみたいで、ふみがカメラで撮ってくれた写真が、なかなかいい。言わないとこれが小さい子が撮ったと思えないほど。
今日も、ふみは石の上に立って、
いかにもカメラマンらしく、「もうちょっと近付いてくださ〜い、はい、そこで」と指示する。
通りかかる人が吹き出すのが聞こえる。
出口に、バラに関する食品やグッズを売ってるコーナーがある。
バラの羊羹があって、ふみは、迷わず試食のタッパーの中の羊羹を取って食べた。
子供は試食を勝手に食べちゃダメだと、ふみには10回以上言ってる。
なのに全く聞かない。
羊羹なんかは、もしうちにあるなら、ふみは一口すら食べないはず、けど試食コーナーのものなら、どんなものでも食べれそうな感じ。
怒りたいけど、人の前だし、我慢した。
しかたなくそこでバラの押し花のキーホルダーを購入(バラの羊羹はいかにもまずそう)。
出てきたら、わたしはずっと黙ってた。
ふみは、なんか空気が違うと感じたようで、わたしの顔をうかがう。
しばらく歩いてから、わたしはしゃがんで、ふみの肩を持った。
「何回も何回も言ったよね?ママに聞かないで勝手に試食のものを食べたりしちゃダメ、どうしてふみは聞かないの?」
ふみは黙る。
試食だけじゃない、ふみは、お店のものをすぐ触ったり、手に取ったりする癖がある。
それも何回も何回も警告してるが、直らない。
「今度もう一回そういうことをしたら、ママは針でふみの手を三回刺すからね。手で取ったら、その手を刺すから。ほんとうにするから。わかったね?ふみはどうも痛みじゃないと覚えられないから」
ふみは泣いた、「ママごめんなさい」と。
「ふみはいいけど、そういうことをしたら、結局ママが笑われるのよ。ちゃんと教育してないねっと。全部ママが悪いことになるのよ」
「そうしたら僕、僕のママを笑わないで!笑っちゃダメ!ってその人たちに言うよ」とふみは言った。
そういうことじゃないんだから…。
でも、ちょっと嬉しかった。ふみがわたしを守ろうとしてるんだね。
昨夜、ある方から、わたしに、お手紙が届いた。
わたしの本を読んで、日本人だけど、自分の小さい頃に重ねて、とっても楽しかった、と。
「一度読み又もう一度読み返し…、わたしの心を代弁して頂いた事を、心より感謝いたします」と書いてありました。
手刺繍の素敵なハンカチも下さったのです。