親はつらいよ
ふみをお迎えに行って、部屋に入った途端、Sちゃんが走って来て、
「ね、見てふみ君のママ、ここ、ふみ君がやったの」と、指で自分の眉あたりを指して言う。
見た目は別に何もないけど、でも本人が言うから、まずふみにあやまってやらないと。
「ふみ、ダメじゃない、Sちゃんの顔をやっちゃ。ちゃんとSちゃんにあやまった?」
「あやまってない!」
「なんで?!ダメじゃない」と言いながら、ふみの頭をSちゃんに向かって押した。
その時、近くにいるNちゃんが、
「違うよ、Sちゃんがさきにふみ君の顔をこうやってやったの」と、指でつねるようにして見せた。
Sちゃんはちょっと気まずそうに目線をずらした。
そ、そうだったのか。
帰り道に、ふみに聞いた。最初は言いたくないふみは、やがて、
自分の椅子にSちゃんが座ろうとして、それからモメ初めて、Sちゃんはふみのほっぺと腕を爪でつねって、
ふみはSちゃんをパンチ(ふみの言葉)。
こういう時は女の子はいいね、SちゃんもNちゃんも、はっきり言えるから。男の子はこういう時に限って口下手で、それともへんなプライドで、なんだか損しちゃうね。
連絡帳に、ふみは今日は昼寝していないと書いてあって、
夕飯はもう、緊張の中ですませた。
お風呂に入って、すぐ寝るかと思ったら、ふみは同じ組のU君に蹴られたところが痛いと、涙を滲ませてた。
もう、くたびれた…。
親になって、楽しいとか、幸せとか、よく聞きますけど、
わたしは、それは、もちろん感じたこともあるのだけれど、
それより、もっともっと多いのは、心配、心配、悩み、悩み、つらいほど。
親になって、なにが楽しいのでしょうかって、いつも思います。
大きいことはもちろん、毎日の食べるのも、飲むのも、トイレ、お風呂、寝るのも、一々面倒、一々気に掛ける。
しかもこの心配は、限りがない気がする。その時期その時期、その年その年、それなりのたいへんさが出て来て、限りがないわ、絶対に。
それを考えるだけで、…。
わたし、やっぱり親に向いてないなって、ときどき思う。
まだ保育園の時にすでにこうって、これが中学校でもなって、万一イジメにあったらどうしようって。
「そういうことがもしあったら、わたしはもう本当に耐えることできないからね。わるいけど、わたしは一番ラクな方法を選ぶから」と主人に言った。
なにもかもラクになって、心配も苦しいも感じなくなって…。
誰かと戦うとか、頑張るとか、もう、無理だから。親に向いてないね、やっぱり。
なんだか最近、ちょっと疲れたのかしらね。
明日、半日お休みを頂こうかしら。