北京

おやおや、足まで載せたりして、実に豪快だね。
ここは北京国際空港。
第三ターミナルまで出来て、広くてきれいで、記憶のとまた全然違った。



早朝、関東地方の地震でふみが目覚めて、そのまま眠ってませんでした。


パパに羽田空港まで送ってもらいました。
羽田は成田より遥かに便利だわ。
これから国際線は全部こっちにすればいいね。

そのためまだ建設中で、今のは国際空港としては、やや狭くて古い。




中国人のパワーは、やはり違うわ〜

ふみは憧れの窓側席が取れて、喜んで行って見たら、
男の人が普通に座ってた。


ふみとわたしの搭乗カードを見せると、
「ここに座るの?あっそう、別にいいよ」と男の人はしぶしぶ通路側の席へ移動した。

ちょっと納得いかないけど、ま、いいっか。

トイレ行こうね、とふみを説得するのは、結構時間がかかった。


ふみは新幹線のトイレも怖い、水流す時のあの“ほぉっ”の音がだめだから。

ふみトイレして、さきにでてもらってから、“ほぉっ”と流した。


トイレ近くの一列が空いていて、ふみとそっちで座った。
三人座席で、わたしは真ん中に座り、ふみは窓側だったり、通路側だったり、
そうよね、4時間の空の旅、窮屈で退屈で、窓からは、永遠に雲海しか。


ふみは、うちにいる時と違って、お利口だった。



ふみがまた窓側へ移動して、通路を挟んで隣の女性が、暑くなったらしく、脱いだ服を、上の棚に置けばいいが、通路を挟んでわたしたちの通路側の席にぽんと投げ出して置いた。


その席に戻ろうとするふみは、唖然として、「なんで?!いやだよ、僕の席なのに」とわたしに言う。

「しょうがないじゃない、ふみがいなかったもん、じゃ、ふみちゃん頑張って言ってみてよ、僕の席よって、負けないで」


ふみは黙った。


中国航空会社だけど、日本人スチュワーデスが一人いて、


ふみは急にその女性を大声で呼ぶ 、
「お姉さ〜ん、ジュース下さ〜い」

ほぉ、堂々としておる。
ふみなりの抗議かしら、内容も相手も違うけど。
日本人スチュワーデスが来て、親切にふみにジュースの種類を尋ねて、ふみと少しおしゃべりもした。


途中少し気流に遭った時も、着陸前30分の時も、放送されてるお手洗い使用禁止を、皆さん無視し、普通に動く。


以前なら中国人はしょうがないなと思うけど、今は、
やっぱり中国人みんな元気だなと思った。

活気があって、自由で、エネルギーがあって、ちょっと恐いもの知らずだけど。
でもやっぱり元気だわ!


着陸した途端、皆さんすぐシートベルトを外し、立ったりする、まだ猛スピードで滑走中だけど。


スチュワーデスも別に慌てず、
「ちょっと座ってくれないかな」と。


立っちゃダメ?それなら携帯を使うわ。
「もしもし、俺だけど、着いた着いた、まだ機内、今回?今回はね、大阪に行って、東京から飛んできた」
ツアーみたい。
しかし完全に止まるまで携帯電話使用禁止とのアナウンスしたばかりなのにね。


そろそろ着陸の時、後ろのほうから男性が来て、

わたしの窓側の席に置いてるカバンを指さして、
「あんたの?どいてもらっていい?俺外を見たいからさ」と。
恰幅のいい中国人でした。

はいはい。

ふみはしばらく状況が読めないようだった。(通路側を挟んで座ってる女性は、また寒く感じたらしく、わたしたちの席に置いた外套を着た)

ははは。

「なんであのおじさんここに座るの?おじさんが大きいから、外が何も見えないよ」とふみは文句を言う。


「座りたいなら言ってあげようか、おじさんは怒らないよ、あ、そうかって離れるから」

別にいいよとふみが。


ふみを慰めてるのではなく、実際そういうことです。

中国人は駄目元で、どんなことも簡単に諦めないよ。

着陸は第三ターミナル、荷物を受け取るところまでは、電車に乗って歩いて、歩いて歩いて、結構な距離。
北京空港は広いや。


‐7、8度の中のタクシー待ちの大行列のこと!


やっと誘導に従ってタクシーに乗り、ふみはまもなく車酔いが始まった。


ジュースを飲み過ぎのもあるでしょう。
たくさん飲むとまた吐くよと言ったのに、少しも懲りないねふみは。
疲れもあったんでしょうね。

袋を用意して、ふみは吐いた。
なんだかわたし、もうこんな状況が慣れたみたい。



×大学の構内に入り、広いこと広いこと、走っても走ってもきりがない。


招待所(ホテル)はどこだかも知らない、運転手さんは、いちいち降りて人に尋ねる。


中国のタクシーの運転手、日本より遥かに親切だと、前から思った。

荷物は運んでくれるのは当たり前、不機嫌の顔は全然ない。


やっと招待所にたどり着いた。
運転手さんは、「子供をさきに抱いて入って、眠ってるから冷えるよ」と素早く荷物を運ぶ。


ふみは起きた、元気になった。
いつものパターンだわ。

招待所の部屋は結構きれいでした。
荷物を整理したりして、もう遅いから、さあ、お風呂入ろう。
お湯を流して3分間、水になった。

慌てて出てきてふみにまた服を着せ、フロントに電話する。

大丈夫だよ、壊れてない、沸かすまで40分待って、との回答。
40分?!もう10時だけど、しかも北京時刻だから、東京時間はもう11時だよぉ〜


40分待った。

お湯来ない。

二、三回人が見に来た。

最後は技術者らしい男性が来て、
「もう使っていいよ、電源入れながら使って」
「ダメだよ、感電して死者もでたとニュースになってるから、ダメダメ」と姉が。
「安心して、責任取るよ、ぜったい」
「責任取る?人が死んで責任取ったって」

「ママ、何言ってるの?おじさんが」

「え?おじさんは、おじさんは直したって言ってる」
「やった!おじさんすごいね。感動的だね」

「感動的?」姉は爆笑。


2、3分以内、シャワーだけと思ってふみを洗ってやった。

「ごめんね、ふみ、寒いでしょう」
「だいじょうぶ、許してあげる」

泣けるぅ〜


ふみのあとわたしがシャワー、
シャンプーを髪にやった途端、
あれっ、お湯じゃないわ、こりゃ、水!
水がどんどん冷たくなってきて、
わやや、
わたしは冷たい水で髪を洗い、そして、体を洗った。

鏡の中の自分は、黒に近い紫色の口紅に塗ったようだ。

そして震えが止まらないや〜

北欧の冬泳の気分だ。


歯をがたがた音立ててるわたしに、
姉はドライヤーの熱風を向ける。

なんか燻製のダックを作ってるみたい。


布団に入り、ふみを寝かす。
くたびれてるふみはすぐ眠った。

布団の中だが、わたしは手足が冷たく、震えがまだ止まらない。


持ってきたカイロを姉に頼んで足辺りの敷布団に貼ってもらって、なんとか少しずつ暖まった。


姉がフロントと交渉し、明日部屋を換えてくれるって。
でも、ずっとお風呂は壊れてないと言い張ってた。


北京の初日でした。