もう少しで立春
パパからでんぐり返しを教わって、夢中に練習、一気に十数回もするふみ。
その体力がうらやましいわ、ずっと、ずっとやり続けていた。どんどん上手になってた。
ふみは柔道に、まだ“怖さ”が残ってると思うんだけど、でもやる気満々、音楽教室の時とは違う。
音楽教室に対しては、どっちかと言うと、つまらなさそうな様子です。
3月下旬の発表会の費用も払ったから、何が何でもそれには出るようにと、ふみに念入りに言った。
「ふみは男の子だから、余計にいろんなことに体験したほうがいいよ、そうしたらふみはどんどん一回りも二回りも大きくなって、逞しくなれるから」
しぶしぶとふみは、「わかった」と言った。
今日も穏やかなよいお天気、六本木ヒルズに行こうと思った。
六本木ヒルズができてからもう何年経ったのでしょう、まだ一回も行ったことがない。
駅前の中学校のグラウンド、お兄ちゃんたち野球をやっているのを見て、ふみは思わず立ち止まった。
地下鉄で麻布十番駅で降りて、神社の宝船にふみは喜んだ。
10分ほど歩いて(地下鉄構内でも結構歩いたけど)、六本木ヒルズに着いた。
しかし六本木ヒルズ、なにが楽しいのかな。
ふみもわたしもそう思う。
映画館も展望台もあるみたいだけど、ふみもわたしも行く気はなかった。
お腹がすいて、中華料理店に入った。
ふみは焼きそばで、わたしは久しぶりに坦々麺でも食べようかなと思った時、
「日本一辛い麺」というの目に入った。
献立の写真はとっても香ばしそうで、それにした。
辛いものが苦手のふみがとめたが、聞かなかった。
「匂いだけでも辛い」とふみは鼻を塞いだ。
日本一辛い麺っか。
辛いのはともかく、それ以外味が薄くて、というか、なくて、上の方に約1センチ近い透明っぽいラー油と思われるあぶら、
あ〜大失敗だな、すくなくともわたしには。
「だからやめたほうがいいと言ったのに」とふみが。
「うん、ほんとうに」
「いつもこうよ、ママは、懲りないね」
あ"、言われたぁ〜
言われてもしょうがないや、何回かあったわ。辛いものに惹かれ、食べたら後悔、みたいな。
「これからふみはちゃんと言ってね、ママは本当に懲りないね」
「うん、言ってあげるよ」
ふみ、わたしよりしっかりしたりすることがある。
昨日、柔道の道場に行く時だって、水筒だけ用意したわたしに、「着替えもじゃないの?前行った時、言われたでしょう」とふみが。
たしかに。全然忘れてた。ふみ、大人の話しを聞いていないように見えたが、ちゃんと耳に入ってたのね。
これからも頼むよ、ふみ。
そとに座って、ふみは初めてクレープを食べた。
クリームを鼻の先っぽまでくっつけて、おいしそうに食べてたな。
大通りに沿って、また麻布十番駅へぶらぶらと歩く。
「これは中におそばがあるね、うん」と。
「おそば?食べるあのお蕎麦?」
「そうよ」
「どれどれ?」
う〜ん、いくら見ても、わからないや。
ふみは得意そうな顔して。
一月にしては、暖かい一日でした。